BOOK ROOM  本の部屋(98年.7月分)


 読書感想の過去ログです。

*目次

・原作・青木吾郎 漫画・小川幸辰「孤島館殺人事件」
・イーデン・フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」
・山田正紀「神曲法廷」
・藤木稟「陀吉尼の紡ぐ糸」
・エラリー・クイーン「レーン最後の事件」
歌野晶午「死体を買う男」
・カーター・ディクスン「弓弦城殺人事件」
東野圭吾「放課後」
・ジェームズ・ヤッフェ「ママ、手紙を書く」
・西澤保彦「猟死の果て」
・長谷川裕一「すごい科学で守ります!特撮SF解釈講座」
・西原理恵子「ぼくんち」
・栗本薫「グイン・サーガ外伝14 夢魔の四つの扉」
・山口雅也「日本殺人事件」

その他の過去ログ: 
98年8月〜10月に読んだ本
98年11月〜99年3月に読んだ本
99年4月〜99年10月に読んだ本
99年11月〜00年3月に読んだ本
2000年4月〜2000年10月に読んだ本
2000年11月〜2001年10月に読んだ本

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・原作・青木吾郎 漫画・小川幸辰「孤島館殺人事件」
 アフタヌーンKCで発売されているミステリ漫画「桜神父の事件ノート」その2である。某氏からオススメいただき、探していたのを先日発見したので、早速読んでみたのだが・・・
 どうも、あんまりフィーリングが合わなかった、というのが正直なところだ(^^;)
 孤島で起こる連続殺人、黙示録に見立てられた死体、次々と殺されていく来客達・・・本格ミステリの王道ともいえるパターンを踏襲した、オーソドックスな本格ミステリ。パターンであることが悪いとは言わない。が、孤島ものミステリは数々あれど、他のものに負けない個性があるかと言われると、ちょっと・・・・首を傾げる。なんだか、動機といいトリックといい展開といい、随分と大雑把な感じで、「コミックである」という枠組みの中に甘えて手を抜いているようにしか見えないのだ。伏線も、随分甘い。伏線などどうでもよくなるようなぶっとんだ発想があるなら、それでもいいのだが、そういうわけでもない。ようするに、中途半端なのだ。これならば、金田一少年や名探偵コナンの方が、旧来のミステリからトリックの借用というマイナスを差し引いても、ずっとアクがあるし、おもしろい。この作品が、もっと昔に描かれていたのなら、もっとおもしろく見えたのかも知れない。が、読者の方が本格ミステリにすっかり開眼してしまった昨今にあっては・・・・発想を根本から変えていただかないと、先行きは暗いように思える。とはいえ、桜神父の荘厳なキャラクターは、このまま埋も れさすには勿体無い。なんとか、もっと面白くできないものか・・・
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・イーデン・フィルポッツ「赤毛のレドメイン家」
 掲示板を見られた方はご存じだろうが、この作品は、Enigmaさんから「面白くない」と太鼓判を押されている(笑)よって、眉に唾をつけながら読んだのだが・・・・やはり、面白くなかった(爆)物語の展開が随分と間延びしていて、途中で退屈になってしまうし、探偵役も魅力に欠ける。あからさまに怪しい女(ちなみに、犯人ではない)にいいように操られているのに、本人はまるで気がつかない。読者ですら目を覆いたくなるほどの愚行。トリックも、なんだか作品中で力説するほどには天才的なものには感じられない、誰でも思いつきそうな割にすぐぼろが出そうなものだし(ラストまでボロがでなかったのは、奇跡としか思えない)。で、犯人も悪の哲学を声高に叫び、悪の天才を気取っているが、はっきり言ってたいしたことない(と思う)。なんだか、作品中でわあわあ騒いでる割に、何もかもがたいしたことない、というのが総合的な印象である。まあ、乱歩の時代には、まだトリックのバリエーションも乏しかっただろうから、これでも斬新に思えたのかもしれないが・・・・後世にまで絶賛され続けるには、少しパワーが足りなかった、というところだろうか。
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・山田正紀「神曲法廷」
「神の烙印を押された男」佐伯神一郎検事が、異端の建築家が設計した神宮ドームをめぐる連続殺人に挑む!・・・って、「神の烙印」ってなんじゃらホイ?(^^;)と思いつつ読み始めたが、なかなか重厚な濃い口の作品でした(*^_^*)タイトルが「神曲法廷」だけあって、作品の中心には「神曲」がある。一つの文学作品から、ここまでエキサイティングな物語を構築する作者に脱帽m(_ _)mそれとも、「神曲」だからこそ、このような濃い口のソースを絞り出せた、ということか。
 主人公、佐伯のキャラクターは、なんとなく「新宿鮫」の鮫島を思わせる。もっとも、こっちは本格推理だからかどうかは知らないが、もうちょっと神経質でおとなしい性格をしている。が、検察のシステムの落ちこぼれとして、左遷寸前・孤立無援(厳密にはそうではないが)の立場に立たされつつ、巨大な謎に立ち向かっていくという点では、まさに共通。そして、新宿鮫にも言えることだが、そういう彼らの姿は探偵・ミステリの主人公というより、怪物に立ち向かうヒロイック・ファンタジーの英雄のようである。そしてまた、ストーリー展開も、英雄の冒険譚のごとくスリリングで、読み始めると止まらない勢いを持っている。が、だからといって謎解き部分がないがしろにされているということもない。ちゃんとした、本格推理に仕上がっている。
 佐伯以外のキャラクターも極めてアクが強い。「憑きもの」について研究し、佐伯を追い回す望月助教授、ルチフェルを象徴する妖しい美少年、水無月。そして、「神曲」の地獄に取りつかれた異形の天才建築家、藤堂・・・・誰一人、「影が薄い」という人がいない(^^;)全員濃い口でのキャラクターである。いったい誰が犯人でもおかしくない、どんな異常な動機でも納得できる、そう思わせるオーラがぶんぶんと噴き上がっているのだ。
 重厚なキャラクター、ストーリー、謎――そして、あのラスト(@@; この作品のテーマを挙げるならば、それはやはり「罪と罰」ということになるのだろうが、ラストを読んだ後では、もしこの世に「絶対的な正義」なるものが存在するのなら、それは必ず人間に災いをもたらすのではないか。・・そう思ってしまった。
 神とは、正義とは、悪とは――あまりにも巨大なテーマの物語でありました。強いて欠点を挙げるなら、内容が重すぎて、体力があるときじゃないと読めないこと、くらいかなあ?
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・藤木稟「陀吉尼の紡ぐ糸」
 異界の息吹が聞こえてくるような、妖しい物語でありました。が、物語の構成、パターン的には、どうも京極夏彦の二番煎じ的なイメージを拭えません(^^;)が、まあ、キャラクターも、展開もそれなりに楽しめるから、文句を言う筋合いはないんですが。京極作品における「脳の中と外の世界」というテーマを、そのまま「異界」というキーワードに置き換えたら、この作品になるかな?それだけに?京極を「本格ではない」と思っている人がいるのと同様、この作品もあんまり「本格」とはいえないと思う(^^;)確かに、全ての伏線がぴったりと結びつく、という点では、「本格」してるといえるのかも知れないが。(誰かいるのか?(^^;作者以外で真相を当てられる人)どっちかというと、オカルト・ホラーとしての楽しみ方が、ふさわしいような気もするし(最後の方は本当にコワかった)。
 まあ、そういう点を差し引いても、奇矯な名探偵・朱雀十五の個性と、行間から漂う妖気にあてられて、ぐんぐん読み進めてしまう魅力に満ちてます。解決も、竜頭蛇尾ではないし。次回作はもっと面白いらしい。期待しよう。
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・歌野晶午「死体を買う男」
 島田荘司からの推薦の言葉に、「この作品は歌野晶午の最高傑作である」とあったが、この言葉に偽りはない。新人作家が書き上げた、江戸川乱歩と萩原朔太郎が推理合戦を繰り広げる傑作「白骨鬼」をめぐる謎。作中作の体裁をとる「白骨鬼」だけでも十分面白いのに、それを現実世界にリンクさせた更なる謎の二層構造。うーーん、まさに名人芸。歌野晶午は、デビュー当時、島田荘司の絶大な支持を受けながら、綾辻行人などと共に「小説としての出来」について散々叩かれた。が――化ければ、化けるものですねえ(^_^;)「歌野晶午の文章は完成された」と評しているのは先ほどの島田荘司の推薦文だが、「白骨鬼」における乱歩の文体模写(?)も、極めて上手い。久々に、続きが読みたくなてたまらなくなる作品でした。素直に面白いだけに、どうも気の利いた言葉が思いうかびません(^_^;)が、ないものねだりで無理矢理文句をひねりだすなら、「もっと読みごたえが欲しい」というところですか。せっかくの魅力的な設定、もっともっと、乱歩と朔太郎の活躍を見たかった!作品中、現実と「白骨鬼」の世界、二つの世界が交互に描かれているわけだが、例えば「白骨鬼」だけを純粋 な一本の小説として見た場合、中編程度の長さしかない。なんだか、勿体無い(/_;) いっそ「白骨鬼」だけでも普通の長編並みの長さにして、合計は京極作品並み(笑)にしてくれると、死ぬほど嬉しかった!・・・まあ、今の段階でも、それなりにバランスがとれているので、作品として構成が悪い、ということでは全くない。本当の、ないものねだりなのでした(笑)・・・・困ったヤツだ>自分
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・エラリー・クイーン「レーン最後の事件」

 元名俳優である、耳の不自由な探偵、ドルリー・レーンが活躍する、「Xの悲劇」、「Yの悲劇」、「Zの悲劇」と続くシリーズの完結編。前の3冊はもう4〜5年前に読んでいたのに、なぜかこの作品のみ後回しにしていて、やっと全冊読破を果たしたσ(^-^;)。後回しにしていたのには、一応言い訳がある。小学生の頃に、この作品の児童向け抄訳版を読んでいたため、ストーリーをだいたい(ということは、衝撃のラストも(^_^;))知っていて、なんとなく「続きが気になる」という心境にならなかったせいだ。ラストについては、そのあまりのインパクト故にきれいに記憶していたが、トリックについてはきれいに忘れ去っていたので、新鮮な気持ちで読むことが出来た(苦笑)。実を言うと、自分はクイーン作品があまり好みではない。その論理性と独創性は認めるけれども、物語性、という点では、随分とないがしろにされている、という感覚を自分はどうしても拭えないからだ(この好みゆえに、自分は国名シリーズより後期のライツヴィルものとかの方が好きだったりする)。が、この四部作については、全く違う印象を以前から抱いていた。謎、論理性、物語性、キャラクターの魅 力――その全てにおいて、完成されていると思うのだが、この作品を読了するにあたって、その気持ちは更に強くなった。また、この本編ではシェイクスピアの死の謎をめぐる歴史ミステリの要素も加わり、前の3作とはまた違った魅力を備えている。そして、先ほどちらっと述べた、「衝撃のラスト」――何度読んでも、泣ける(/_;) 。まだドルリー・レーン四部作を未読の方、絶対に「Xの悲劇」から「レーン最後の事件」まで順番に読むべし(゚-゚)b。その方が絶対感動できる。
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・カーター・ディクスン「弓弦城殺人事件」

 密室の巨匠ディクスン・カーのカーター・ディクスン名義での作品のひとつ。カーお得意の密室殺人、あやしげな古城での犯罪――と、古き良き時代のミステリの雰囲気を存分に味わえる佳作(*^_^*)
 ただし、「古き良き時代」のミステリなだけに、少々犯人やトリックの意外性、という点では弱いやも知れず・・・まあ、不可能犯罪大好きの私は、すっかり楽しんで読んでしまいましたが。
 また、私はカーの創造する探偵役も大好きで、ヘンリー・メリヴェール卿、ギデオン・フェル博士は勿論、「火刑法廷」のゴーダン・クロスまで好きである。だから、この作品での名探偵、ジョン・ゴーントの登場にも随分期待して読み進めたのだが・・・カーが生み出した他の探偵達に比べると、妙に影が薄いことは否定できない(^_^;)メリヴェール卿やフェル博士など、あまりにアクのあるキャラクターを知った後だから、自然とそう見えてしまうのかもしれないが・・・ちょっとがっかり。普通の、ちょっと頭のキレるおじさん、という感じである。が、そういうマイナスを差し引いても、古城、甲冑、石弓、亡霊、不可能犯罪――ミステリ好きにはたまらないそれらのソースを、お菓子の詰め合わせをつまむように一つ一つ美味しく楽しむことのできる、贅沢な作品ではあります。
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・東野圭吾「放課後」
 江戸川乱歩賞受賞の、東野圭吾のデビュー作。女子校を舞台に起こる教師殺人事件。密室殺人、衆人環境での殺人は本格味たっぷりである。青春ミステリだから・・・かどうかは分からないが、全体的に透明で瑞々しい雰囲気にあふれ、主人公である教師・前島をはじめ、登場人物達の心理描写も、読んでいてなんとなく切なく、胸に迫ってくる感じがする。この物語のキーワードは、タイトルどおり「放課後」――未だ無色透明な殻に閉じ込められて生きる少女(少年)達が、束の間解放される時間である。
 そしてまたもう一つ、これはこの作品を読んだ方にはお分かりいただけると思うが、「人を見る」「人に見られる」ということ。人は、人を見ることによって自分が人であることを、自分が人の社会に生きていることを知る。そしてまた、人に見られ、己の存在を他者から確認されることによっても。極端な言い方をすれば、「見ること」「見られること」なくして、人は己の存在を証明できないのだ。それだけに、時に「見る」ことは人の存在そのものを抉るほどの凶器にさえなりかねない。とりわけ、己の存在をまだ手探りで探し続けている少年少女の時代には。きっと誰もが、少年時代には無意識にそのことを知っていたに違いない。だが、現実に流される日々の中で、大人は己の存在を探すことさえやめ、他者の存在を認めることもできなくなってしまう・・・下手に書くと、なんだかネタバレになりそうで上手く書けないが、
結局「放課後」は、「存在」というものに対する尊厳を失った大人から、穢されもみ消されそうになる己の存在を死守する少女達の、戦いのドラマであったのだと思う。そう考えると、己自身を持て余したまま、「存在」の意味を捨てることも守ることも出来ずに生き続ける前島は、この事件の見届け役として必然的に選ばれたといえるだろう。僕は、或はあなたは、己の存在をどのようにとらえて生きていますか?
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・ジェームズ・ヤッフェ「ママ、手紙を書く」
 安楽椅子探偵ものの名作、「ママはなんでも知っている」の復活版&長編版、というファン待望の作品。名キャラクター「ブロンクスのママ」は、ニューヨークを離れて息子の住む田舎町メサグランテに行ってしまい、「ブロンクスのママ」ではなくなってしまう(^_^;)。安楽椅子探偵を長編で、という試みに、少々不安を感じつつ読み始めたが、なかなかにテンポよくページをめくっていくことができた。ママやその息子デイヴの温かみのあるキャラクターもさることながら、ママの示すヒントにしたがって、タナボタ的に
(笑)もたらされる新しい事件の展開も、なんだか楽しい。トリックも、斬新であるとは思わないが、適度にアクがあり、複雑でない分ストーリー展開にマッチしていて良い(^_^)。
 だが、最後に一つだけ気になるのは、ママが探偵として、やけにあっさりと神の役を演じてしまうことだ。あまり詳しく書くとネタバレになるのだが、ママがデイヴに吹き込んだ真相によって、一人の人間が手ひどく断罪される。たしかにその人物の責任は問わねばならないが、その行為によって救われる人間がいることも否定できないが、その審判を、(悪く言えば)安楽椅子探偵としてデイヴの言葉からでしか事実を知ることのできないママが、いとも簡単にやってのけてしまうというのが・・・どうしても抵抗を感じてしまう。(^_^;)まあ、その裁きの責任を一人で背負い込む覚悟はあるみたいなので、その点に関しては評価出来るのだけど。
 とりあえず、次回作「ママのクリスマス」も期待\(^O^)/
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・西澤保彦「猟死の果て」

 
 高知在住・奇抜な発想と素早い執筆でミステリファンをうならせる、西澤保彦の新刊。すでに今年に入って数冊目の本である・・・(^_^;)
「SF新本格」と呼ばれることも多い氏の作品群だが、今回はSF的要素はなし。シリアル・キラーの登場する、サイコ・サスペンス調の作品。が、いつもと違うのはそのテーマだけではない。あっさり言ってしまうと、文体から違う。後書きで氏も書いているが、いつもの饒舌な語り口から、淡々とした冷たい、感情を廃した感じの表現になっている。この文体の変更が功を奏して、犯人をはじめとする「狂った」あるいは「狂ってゆく」人々の姿は妙にリアルで、読んでいてうすら寒くなるほど。だが、初の試みであるためか、少しぎこちなさを感じるのも事実である。
 ストーリー展開はテンポよく、本を途中で置くことを許さず、一気に読ませる。ハードカバーなので少々値が張るが、それを有益な投資だと納得できる作品だと思う。
 
 以上は総合的な評価。以下、もうちょっと突っ込んだ」部分への感想。
 この作品中には、「人が自分の思い通りにならない」ということに対して納得できない、それが病的なまでに高じて犯罪に走る人間が何人か出てくる。なるほど、ネクロフィリア(死体性愛)の心理というのは、こういう感情からでてくるのか、と妙に納得。最近話題の「キレる」という心理も、根っこは同じような気がする。人には感情や意志があり、だからこそそれは時として対立し、だからこそ人間であるともいえる。そのこと理解することが出来ないから、相手が自分の思い通りにならないとき、相手に殺意を感じる、という図式ではとても共通したものを感じる。
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・長谷川裕一「すごい科学で守ります!特撮SF解釈講座」

 この本はスゴイ(@@;
 四捨五入すると年齢が30歳になる(^_^;)ショーシャンクが保育園児の頃より続く、東映スーパー戦隊シリーズ――これらに登場するロボット、戦艦、必殺兵器、敵の組織などを、全てSF的に解釈をこじつけているのだが、あんなその年その年の勢いで決められているとしか思えない設定の数々が、これにより全て合理的に説明されてしまうのだ!そして、各戦隊と戦隊の間の関係、悪の組織の関係をも大胆に推測している。もしこの本の説明を信じるなら、
 戦隊シリーズは一つの巨大な大河ドラマにすらなってしまうのだ!(*^0^*)(爆)
 だが、ただ一つ、長谷川氏ですら科学的説明を一切付けられなかった戦隊がある。(^_^;)
「忍者戦隊カクレンジャー」である。
 長谷川氏によると、この作品については「忍術である」と言ってしまえばそれ以上突っ込めなくなるのだそうだ(^_^;)ごもっとも。
 それにしても、科学的根拠を一切・・・とまでは言わずともほとんど無視して作られている戦隊シリーズの中から、これだけ理屈をひねり出すことができるとは・・・・ホント、戦隊ものを愛すればこそ出来るワザだよなあ、とつくづく感じたのでした。
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・西原理恵子「ぼくんち」

 高知県出身の漫画家、西原理恵子の作品、全3巻。某雑誌の某広告によると、全国各地に「サイバラ本コーナー」が蔓延しているそうで、高知県の書店でも、立派にコーナーが出来上がっておりました。
(そりゃあ、一応地元だもの(^_^;))
 サイバラさんの漫画は、一度知り合いの家に転がっていた(爆)のをなにげに読んで以来、3年ぶりのチャレンジである。最初読んだときもそうだったが、絵柄に反して内容はヘビー(/_;)胸の奥底を抉るような漫画である。
 出てくる登場人物全員、かっこよくない。汚らしい。不器用で、どんくさい。けれども、一生懸命生きている。自分が同じような境遇に置かれたとき、そんな風に必死に生きられるだろうか。考えさせられてしまう。
 そういや、昔、ブルーハーツというバンドがあって、「TRAIN TRAIN」という曲があった。
 その一節に、「弱いもの達が夕暮れ、更に弱いもの達を叩く」というフレーズがあったと思うが、(手元に歌詞カードがないので、間違ってたらすみませんm(_ _)m>ファンの人)「ぼくんち」の舞台となる街は丁度そんな街である。だけど、そういう弱い人たちを、誰も責めることはできない。そうしないと生きていけない、やっていけない人々もいる、自分自身もまた、そういう人間になりうることを知っているからだ。

 うーん(^_^;)どうも、この本の感想になると、文章が感傷的になります。不愉快に思われた方、ごめんなさいm(_ _)m
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・栗本薫「グイン・サーガ外伝14 夢魔の四つの扉」

 栗本薫のライフワーク、「グイン・サーガ」目下の最新刊。シルヴィア姫を探して異形の者達が巣くう地へと踏み込んだグインの探索行も、これで5冊目である。巨大な縦横(時間と空間)の広がり、多彩な登場人物の人生劇場(笑)が魅力の本編に対し、外伝の方は妖しく、蠱惑的(*^_^*)こーゆー世界の方が、どっちかというとショーシャンクの好みであります。で、グインのシルヴィア探しに入ってからは特に、世界観がぶっとんでいる。「想像を絶する」事柄をもちゃんと想像して書いてしまうという、栗本氏の想像力・筆力に脱帽するm(_ _)mだがしかし、ストーリー展開は妙に少年マンガめいて、安直に感じるのは私だけか?少年マンガが悪いというわけではないけれど、グインという圧倒的なキャラクターをその中に配したとき、どうも彼が活躍する世界としては(世界の方が)役不足に見えてしまうのである。まあ、そういう気になる点をいつしか忘れさせ、物語の宇宙の中に引き込んでしまう力量を、栗本氏は持ち合わせている。筆力不足の作家が同じ事をやったら、確実に総スカンを食らうだろうなあ(^_^;)
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・山口雅也「日本殺人事件
 欧米人の抱く、誤った日本像を逆手に取った、パラレルワールドの日本で繰り広げられる本格推理――実は山口雅也の作品を読むのはこれが初めてだが、噂に違わず凄腕、という印象である(@@;
 とにかく、カンノン・シティの存在感に、圧倒される。パラレルワールドを舞台として用いる以上、その世界をいかに構築するかが作品の出来を大きく左右するのは勿論だが、作中のカンノン・シティに関する描写は、逐一こちらの想像力のツボを刺激し、読み進むうち、物語の一シーン一シーンをきわけて視覚的にとらえている自分に気づいた。ここでふと思ったのだが、このようにカンノン・シティに存在感を感じてしまうのは、実は日本人である自分自身が、「日本文化の象徴」として、山口雅也がカンノンシティに掲げたモノたちを容認しているからではないのか。だとすると、日本文化に対して偏った見方をしているのはアメリカ人だけではなく、その庇護のもとで発展を遂げてきた日本人もまた、同じ病にさいなまれているのかもしれない。
 で、肝心のトリック・本格推理部分ですが、うまく世界観を生かした出色のものだったと思います(^_^;) ハイ
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 あんまり、「甘口」になってないかも?(^_^;)

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