BOOK ROOM  本の部屋過去ログ
(2000年11月〜2001年10月)


*目次
アントニイ・バークリー「地下室の殺人」
有栖川有栖「マジックミラー」
木原浩勝ほか「都市の穴」
G・K・チェスタトン「詩人と狂人たち」
アントニイ・バークリー「最上階の殺人」
アントニイ・バークリー「毒入りチョコレート事件」
アントニイ・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」
恩田陸「MAZE(めいず)」
伏見健二「ハスタール」
井上雅彦「竹馬男の犯罪」
小林泰三「玩具修理者」
桐生祐狩「夏の滴」 
スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」
天沢退二郎「光車よ、まわれ!」
濱岡稔「さよならゲーム(A-side,B-side)」
三雲岳斗「海底密室」
倉知淳「壺中の天国」
伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
恩田陸「六番目の小夜子」
東理夫「南青山探偵事務所」
エラリイ・クイーン「九尾の猫」
栗本薫「グイン・サーガ76 魔の聖域」
小栗虫太郎「失楽園殺人事件」
辻真先「デッド・ディティクティブ」
辻真先「アリスの国の殺人」
大塚英志「物語の体操」
長谷川裕一「もっとすごい科学で守ります!」
都筑道夫「キリオン・スレイの生活と推理」
太田忠司「ベネチアングラスの謎」
高木彬光「邪教の神」
恩田陸「puzzle」
柄刀一「アリア系銀河鉄道」
京極夏彦「巷説百物語」 
西澤保彦「なつこ、孤島に囚われ。」

その他の過去ログ: 
98年7月に読んだ本
98年8月〜10月に読んだ本
98年11月〜99年3月に読んだ本
99年4月〜99年10月に読んだ本
99年11月〜00年3月に読んだ本
2000年4月〜2000年10月に読んだ本
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アントニイ・バークリー「地下室の殺人」
 新婚早々のデイン夫妻が引っ越してきた新居の地下室。そこで発見された、身元不明の若い女性の死体。捜査の糸口さえ見つからぬ事件に、スコットランドヤードは苦戦する。モーズビー警部はまず<被害者探し>に乗り出し、やがてその女の素性を探り出すが・・・偶然にも、彼女の身辺の事情に関わりがあった名探偵シェリンガム。彼が捜査に乗り出し、事件は意外な進展を見せる――
 どうやら「最上階の殺人」と対をなし、「想像力」及び「名探偵」の敗北と最終的勝利を描いているらしいこの作品。たしかにシェリンガムは地道な捜査のモーズビー警部に対し、事件の真相を看破することで勝利した格好になります。うん、面白くないことはないです。ですが、今回はシェリンガムがいいとこを見せてくれるのを期待して(実は、自分が読んだバークリー作品て、全部シェリンガムが推理とちっているんですよね)、そのとおりになったにも関わらず、なんか歯切れが悪いです。これは、事件の背景を説明するのに(モーズビーがそれを把握するのに)シェリンガムが書いた小説が使われていることと、今回のシェリンガムの推理が、論理と言うよりは彼個人の感覚による関係者達の性格分析によってしまっていることにより、どうも事件の捜査全体がシェリンガムの独善で成り立ってしまっているような気がして仕方なかったからでしょう。前半の、モーズビーの被害者探しがかなり地道でしっかりしているので、その反動で余計にそう感じてしまったようで・・・著者のバークリーは、この対比を足を使った捜査方法に対する名探偵の推理の勝利を描くため、そうしたのでしょうが・・ ・。それに、この作品を読んで、私はシェリンガムを名探偵としてではなく名探偵を気取る道化役(爆死)として好きだったのだな、ということを悟ってしまったので、彼がいいかっこしていると反対に面白くないという(笑)
 次読む予定の「第二の銃弾」は、これまたシェリンガムの勝ちらしいんですが。どうなんでしょ。
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有栖川有栖「マジックミラー」
 余呉湖畔で起こった、女性殺害事件。その最有力容疑者は、なんと双子の兄弟だった。そして成立する鉄壁のアリバイ。やがて第二の殺人が起こり、その被害者は双子のどちらからしいが、死体からは頭と手首が失われていた。この複雑怪奇な殺人事件に挑むのは、死んだ女性の過去の恋人、推理作家の空知。鉄壁のアリバイトリックは、果たして解けるのか。
 久しぶりに読んだ有栖川作品は、ノンシリーズでした。でも、好きですね、儂は空知さん。幾分か火村モノのアリスと被る部分はあるものの、その静かな激情家ぶりとか、優しさとかは、派手ではないけど好感が持てて、いいです。あと、トリックも典型的時刻表トリックでありながら、スケールも大きく伏線も緻密で、時刻表がわからなくてもしっかり楽しめるところがいいですね。余韻の残るラストもいいカンジですし、日ごろそれほど話題に上らないけど、もっと評価されてもいい作品だと素直に思いました。
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木原浩勝ほか「都市の穴」
 口裂け女や死体洗いのアルバイト、そういった有名なものから、日ごろ「俺の友達の兄貴の知り合いがさあ」とか言う前口上で語られていそうないわゆる「都市伝説」の類をピンからキリまで集めた、楽しくも恐ろしい一冊。
 この本を読んで一番驚いたのは、日ごろ自分たちが日常の話題として使っているもの、いかにも本当にあったことだと勝手に信じていた話のいくつかが、実は事実無根の「都市伝説」であったこと(例:アメリカで電子レンジに猫を入れて乾かした女性がいて企業相手に訴訟起こして勝った云々、死体洗いのアルバイトはものすごい高給云々)。しかし、こうして指摘されてみれば、たしかに、現実問題として考えるとおかしいし、自分たちも具体的にその事実を確かめたことがなかったりして。人の噂というものが一体どのように変化して伝播していくのか、そのプロセスがよく分かるカンジ。まあ、それをさておいても、怖い伝説だけじゃなくいろいろ笑える伝説もあって、一冊まるまるお得に楽しめました。
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G・K・チェスタトン「詩人と狂人たち」
 詩人にして画家のガブリエル・ゲイルは、狂人の気持ちがよくわかるという変わり者。そしてその奇妙な特技ゆえに、多くの奇妙な事件を解決に導く名探偵でもあったのだった。そんな彼が遭遇した、奇怪な論理で引き起こされた数々の難事件を集めた短編集。
 うーん。狂気をテーマにしているとはいっても、いかんせん書かれた時代が古いので、どうも現在の心理学的常識から見るとちょっとおかしいんではないかと思う部分もあったりしますが、その奇想というかそこから構築される物語と推理の緻密さは、やっぱり特筆に値して、流石はチェスタトンといったところ。ここは一つ、その幻想味にどっぷりと浸ってみるのが正しい楽しみ方でありましょう。
 中でも一番印象に残ったのは、デュパンの「盗まれた手紙」的論理を徹底的につきつめた感のある(ネタバレスレスレかな)、「石の指」。これも科学的にみて、こういうことが実際にあるのかどうかはかな〜りアヤシイ(^^;)感じがするのですが、そのインパクト故にそんなことはどうでもよくなってしまいます。
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アントニイ・バークリー「最上階の殺人」
 名探偵のロジャー・シェリンガムがスコットランドヤードのモーズビー警部のもとで油を売っていると、あるマンションの最上階のフラットで老女が殺された事件の知らせが入る。荒らされた室内、裏庭に面した窓に垂れるロープ。状況は外部からの物取りを連想させ、警察はありふれた強盗事件として処理しようとする。だが、それに疑問を抱いたシェリンガムは、自ら捜査に出馬するが――
 今回も・・・シェリンガム氏は厳密には名探偵とはいいかねるかも。全く情けないヒト(笑)。ですが、この次に書かれた「地下室の殺人」ではかなりの大活躍を魅せてくれるらしいので、快刀乱麻な名推理としてはそっちに期待するとして。いやあ、本当に憎めないヒトです!>シェリンガム 頭も切れないわけじゃないんだけど、どうも想像力が過剰過ぎてほとんど妄想にまでふくらんでしまって失敗したり、俗物で秘書に雇ったステラちゃんに振り回されたり(笑)、本当にあんまりイイトコがないんですが、なんというかいさぎがよくて嫌味がないというか。非常にカワイイ人なんだな、と今回しみじみ感じました。このまま読む本読む本彼が名探偵じゃなくても、別にこのままでも面白いからいいや、とまで思えてしまうくらい。ちなみに、ステラちゃんのキャラも立ちまくりで、すっかり気に入りました。超美人でありながら魅力がない、そういう人って現実にもいますよね。でも、このステラちゃんは外見はどうあれ、その性格とか演技力とかは、メチャクチャ魅力的だと思うんですが。シェリンガムが惚れそうになってしまうのも無理ないし、最後 の数行のシェリンガムと彼女のやり取りも、最高!(笑)。そのへんのボケとツッコミよりも数倍面白いと思ったのは私だけでしょうか?
 と、このように、自分はこの作品を本格ミステリというより、よくできたコメディとして楽しんでしまいました。もしくはキャラ萌え?(笑)で。ですが、ミステリ部分も大がかりだったり派手だったり驚天動地だったりはしないけど、それなりに魅せてくれます。が、これはロジックの妙というより、ストーリーのもっていきかたというか手がかりの提示の仕方の旨さ、という感じですね。
 とにかく、無邪気に楽しめた一作でした。このままバークリーにどっぷりはまってしまいそうな予感が・・・(笑)
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アントニイ・バークリー「毒入りチョコレート事件」
 ペンファーザー卿にチョコレート会社から送られてきた試作品チョコレート。彼はそれをベンディックス夫妻に渡したが、それを食べた夫妻は揃って体の異常を訴え、妻は死亡してしまう。一見シンプルこの上ないこの事件は、その単純さゆえにスコットランドヤードの捜査も難航する。そこで、名探偵の誉れも高いロジャー・シェリンガムを会長とする「犯罪研究会」の面々は、各々に独自の捜査・推理方法を用いて、果たして誰が真相にたどりつくか、発表し合うことになる。個性的な6人の素人探偵が繰り広げる、それぞれの特徴ある推理。彼らは事件の真相を、そして真犯人を看破することができるのか?
 黄金期の名作にして、一つの事件を全く異なる視点から複数の人間が推理するという手法を用いた異色作。ずっと読んでみたいと思っていたのですが、最近随所でバークリーの話題が盛り上がっているのに触発されて、ついに手に取ってみました。
 いや、久々に読んだ海外の古典本格だったのですが、こんなに読んでいて手放しで「面白い!」と感じられたのもまた久しぶり(海外の古典本格って、展開がちょっと退屈、とか、訳が難解とか、結構没頭しては楽しめないことも多いんですよね(^^;)、自分としては。無論、最後まで頑張って読めば報われる場合も多いので、やめられないんですが(^^))。次から次へと展開される推理、時にあっさり、時に意地悪に、そして時には惜しいところで否定されてしまう、違う側面からの推理たち。客観的に観ると、ちと穴だらけだったり短絡的だったりもしますが、それもテンポがいいのでそれほど気になりません。最後まで一気に読んでしまいました。が――最後の真相と真犯人だけは、ちょっといただけなかったです(個人的に、ですが)。あそこまで盛り上げておいて、これかい、という感じ(笑)。ですがまあ、これはある掲示板である方から指摘されたことでもあるのですが、全てのミステリの全ての真相が途中で出てきた推理より面白いわけではないし、現実の事件の真相なんて、そうそう面白いものでもないというのも真実。そう考えれば、この作品自体、一つの事件と手がかりに大してどれだ け推理の可能性を広げられるか、ということが眼目になっているわけだから、この結末も欠点ということにはならないでしょう。推理として甘すぎるのはさておくとして(笑)。それはともかく、ハークリーの作品を読むのはこれが初めてですが、すっかり気に入りました。あまり日本で正当な評価を得ていたとは言えなかったらしいバークリー作品ですが、今は恵まれていていろいろ邦訳も出続けている模様。もっと他の作品も読みたくなりました。
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アントニイ・バークリー「ジャンピング・ジェニイ」
 ちびっとネタバレっぽくなるので、未読の方はご注意を(^^;)
 小説家ロナルド・ストラットンの邸宅で開かれた、参加者が有名な犯罪者とその被害者に仮装するという奇妙なパーティ。その席上で、とにかく皆の注目を浴びたいあまりに傍若無人な態度に及び、会場中から冷たい視線を浴びていた女性、ロナルドの弟の妻イーナ。彼女は、邸宅の中に趣向として設置された、絞首台にぶら下がる三つのわら人形の一つと入れ代わり、死体となって発見された。彼女の当夜の現状から、彼女は自殺とみなされるが、現場の状況に疑問を抱いたロジャー・シェリンガムは、密かに調査を開始するが・・・その目的は、真相と真犯人をつきとめてその人物をかばい、事件を完全に自殺に見せかけるためだった!?
 えーと、この粗筋紹介、これもひょっとしてネタバレになるのかな、などと少し心配になりつつ(^^;)いやあ、バークリー挑戦の2冊目、「毒入り〜」ではどっちかというと名探偵になりそこねたシェリンガムの真の名推理が観られるのかとワクワクしてたら。捜査を開始する動機が、「イーナの死を自殺に見せかけるため」、辻褄を合わせて口裏を合わせるためなんだもの(^^;)。でもって、嫌な嫌な性格のイーナですが、作中でも見事なまでに、まさに蛇蝎のごとく忌み嫌われていて(シェリンガムに至っては「病原菌」とまで言い切ってるもんなー)、誰一人として彼女の死を悼んだり悲しんだりもしくは不利益を被ったりすらしていないもんで、なんか雰囲気的に嫌な感じでした――最初の方は。ですが、そこは語り口の上手さでしょうか、ストーリーが進んで推理が展開されていくにつれ、シェリンガムがいかに口裏を合わせるか、他殺であることを隠蔽して事実を糊塗しようとしていくかに、手に汗握っている自分がいました(笑)。いやあ、変な推理小説(笑)。で も、毒チョコと同じく、これも時間を忘れて楽しめる作品でした。それでもって、あの皮肉極まりないラストのラスト。なんだか、「名探偵の推理」というものを根底から皮肉っているような気がしました。そういう部分も含めて、この作品も毒チョコと同じく、従来と全く違った側面からアプローチした、異色の探偵小説であると思います。
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恩田陸「MAZE(めいず)」
 アジアの西の果てのとある荒野のとある丘。この場所に建つ白い矩形の建物は、現地の人間から「あり得ない場所」「存在しない場所」と呼ばれていた。そしてこの場所では昔から、不可解な人間消失事件が起こっていたのだ。神原恵弥、時枝満、スコット、セリムの4人は、その謎を解き明かすべくこの地に降り立つのだが――
 果たしてミステリなのかSFなのかホラーなのか、作者自身もこの作品がどのカテゴリに入るのかわからない、とおっしゃられていたような雑誌記事をどこかで目にしましたが(記憶曖昧)。そのとおり、本当に分類しにくい作品です(笑)。でも、敢てそういうモノにとらわれない方が、素直に楽しめるお話ではあります。というか、いろんなジャンルの要素が入っているので、二重三重に楽しめます――これは間違いないコト。まあでも、やっぱり全体としてはSFになっちゃうのかなあ。
 自分がこの作品で最もツボに入ったのは、なんといっても神原恵弥氏のキャラクターでしょう。なんて面白いキャラを作るんやこのヒトは、と正直舌を巻きました。以前から恩田さんの作品を読む度、そのキャラクター造形がとても生き生きしていて好感を感じてはいたのですが、ここに来て、更に駄目押しをされた感じです。で、その神原さんがどんなヒトかというと。。。これは、一応ネタバレしない方が楽しめそうでしょう(笑)。
 あと、ストーリーについてですが、結末はやっぱり、「驚愕の・・・」とか「どんでん返し」とかいう表現は似合いません(笑)。でも、それでもいい、というか。変にコケおどしをされるよりは、こういう風にキレイに終わる物語、というのもいいんじゃないでしょうか。最近、帯の惹句に「驚愕のラスト!」とか「前代未聞のトリック!」とか書かれているミステリって多いですけど、刺激もあんまり受けすぎるとちとしんどいというか。激辛な味付けがいくら好きだからといってそればっかし食ってると胃を壊したりするわけですし(笑)、こういう時代だからこそむしろ、予定調和的ですらある(敢えてこう言ってしまいますが)恩田作品に存在価値がある、と思います。
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伏見健二「ハスタール」
 中学三年生の三國タカトは、8歳のときにザワ森の奥で異様な光景を目撃した。材木を組み合わせて作られた十字架に打ちつけられた、裸身の幼い少女――その恐怖の経験は、彼の心の奥深くに刻みつけられ、今でも悪夢のように彼を苦しめていた。そんなある日に出会った下級生の少女、スズナ。彼女はどうやら、タカトが8歳のときにであったあの少女であるようなのだが、彼女にはそのときの記憶がなかった。彼女の養父篠塚宏三も、何やら怪しげな行動をとっている。タカトが目撃した光景に隠された、おぞましい秘密とは?
 私の大好きなクトゥルー神話に連なる作品です。グロテスクな邪神どもが主役な神話作品の割には、この作品のイラストは異様に可愛いです(笑)。おかげで読むのが恥ずかしかった・・・それはさておき。
 タイトルの「ハスタール」は、無論「ハスター」「ハストゥール」とも呼ばれる風の邪神。作品の随所に、数々の神話作品に登場する人物や事柄が織り込まれてあって、特に篠塚宏三の正体には驚かされました。しかし――話の流れとしては、いささかシンプルすぎてもの足りない感じもします。実は主人公が古い種族の一員で・・・などというパターンで事件が解決してしまうような作品には、もうそろそろ飽きましたがな、というのが正直なところ。それでも、クトゥルー神話に真正面から(「魔界水滸伝」なんかのように全く違うベクトルのお話にアレンジしたりせず)取り組んでいるというだけでM私には嬉しい限りなのですが。しかし、ナ*ア*ラト***プ好きの私としては、彼の見せ場ももっと欲しかったなあ・・・
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井上雅彦「竹馬男の犯罪」
 「月刊ウィンピイ・プレス」専属ライターの真野が取材先への移動手段として選んだセスナ機は、途中で嵐に遭遇し森に不時着。そこには、サーカスの出身者ばかりを集めた奇妙な養老院「天幕荘」が建っていた。真野はそこで、奇しくも彼のかつての恋人であった、沢村麻澄と再会する。やがて起こる、やはり奇妙な殺人事件の数々。各々に超人的な特技と個性を持った老人たち、彼らにとっては密室も「不可能」犯罪もあり得ないのではないかとも思える状況。果たして、この連続殺人の犯人は?そして「天幕荘」に秘められた秘密とは?
 この作品を知ったのはそもそも、かつてF推理でご一緒したある方に「トンデモミステリ」の名作の一つとしてお薦めいただいたのが最初だった。それから、購入してずっと積ん読になっていたのだが、ちょっと変わった味のミステリを読みたい気分だったので、手に取ってみました。うーん、たしかにコレは変わり種。元サーカス団員ばかりが集められた養老院、という舞台設定からして相当ぶっとんでいるのだが、その施設の中身もまた、奇想天外。まるで異次元世界にでも迷い入ったかのような感覚に酔わせてくれます。そしてまた、驚愕の真相も――そう、時間と空間を超えた、とんでもない大仕掛け。まさに、「トンデモミステリ」の名に相応しい傑作です。しかし、どうも物語展開の方は、少々冗漫に感じてしまったのは私だけでしょうか。いや、面白いんですけど、途中で名探偵の磨理邑は警察に捕まって、そのままいろんなところに連れていかれるのだが――まあ、この下りも事件の解決に必要な部分ではあるのだけれど、どうせこういう人を食った探偵が出てくるのなら、最後まで事件の現場に居合わせて、存分に個性的で奇矯なな名探偵ぶりを 発揮してほしかったような・・・この辺りはないものねだりの領域ではあるので、作品の欠点とかではないし、不満というほどのものでもないんですが。しかし、この磨理邑さんが出てくる話、もうないのでしょうか。こういう巫山戯た(笑)探偵さんは大好きです。
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小林泰三「玩具修理者」
 死んだ弟を「修理」してもらうため、少女は何でも直すという「玩具修理者」のもとに、弟の死体を持ち込むが――日本ホラー小説大賞短編賞受賞作の表題作と、時間を無秩序に「跳躍」する能力を手に入れてしまった男の悲劇「酔歩する男」を収録。
 本格ホラーの書き手として、どんどん活躍の幅を広げていっておられる小林泰三氏の原点がここに。
 ちなみに小林氏の下の名前は「たいぞう」ではなく「やすみ」と読むので注意(笑)。それはさておき、「玩具修理者」は本当に傑作。クトゥルー神話が好きな人間なら思わずニヤリとしてしまう細かいネタも仕込まれているが、それをさておいても、「玩具修理者」という異様な存在、シンプルながらもインパクトたっぷりのグロテスクな展開、そして背筋も凍る結末。無駄な部分のまったくない、純度100%のホラーという感じ。一方、もう一本の「酔歩する男」の方は、ホラーというより禁断の領域に手をつけてしまった愚かなサイエンティストの悲劇、という感じでどちらかといえばハードSF。「玩具修理者」非常に短く簡潔でありながら衝撃度が高いので、それと比べるとどうもまどろっこしく感じてしまうが、そここそが逆に時間を巡る悪夢から逃れられなくなっていく男の運命を実にねばっこく、搦め捕られていくような感じを覚えさせてやはり傑作。とりあえずこの人の短編の腕前には舌を巻きまして、長編もいろいろ出ているようなので、今度そっちもチャレンジしてみたくなりました、はい。
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桐生祐狩「夏の滴」
 車椅子のクラスメートと分け隔てなく接しているが、その代わりに変わり者の少女・八重垣潤をいじめぬいていた小学四年生たち。八重垣が学校に持ってきたのをきっかけに、彼らの間で突如流行りだした「植物占い」。そして、何故かクラスから児童が一人、二人と姿を消してゆく。一方、事件の背後で大人たちが見せる奇妙な行動。この町で、いったい何が起こっているのか? 
 今年のホラー小説大賞長編賞受賞作です。いや、久々に読んでいて理屈抜きに「面白い!」と思える本でした。生き生きとした子どもたちの姿。クラスメートをいじめまくったり(またこのいじめ方がハンパではないのです)、邪な部分も山ほどあるのだが、それでも不愉快にならないのは、この「いじめ」にしても友情にしても、心理と行動原理がとても自分たちが子ども時代に経験したものと近しいからだと思う。実際、子どもがいじめに走る理由なんてこんなもんだし、いじめるときの言動なんてものはあんなもんです――それが正しいものであるかどうかはさておいて。実は、これほどひどくはないけど、似たような理由で嫌われていじめられるクラスメートって、自分が小学生の時に実際いましたし。林真理子氏が褒めていましたが、そのいじめられている八重垣のキャラクターも、とてもいい味を出しています。彼女の存在が、隠された感情が、物語終盤の悲しみ・切なさを大きく支えていて、いいのであります。いや、子どもの描写のだけがいいのではなくて。テンポよく進む物語、謎の解明。そして、「植物占い」という小道具を上手く使った、驚愕の真相と救いのないラスト。いやあ、いい わあ。荒俣宏氏はこの作品の恐怖シーンがどうももの足らない、などとおっしゃっていましたが、たしかにあまり全体的に怖くはない(おぞましくはあるけれど)、というのはあります。ですが、そういう事をうっちゃっておいても、エンターティメント小説としてこの作品が極上である、というのは変わりないと思います。そして、全体に流れる、切なさ。人の心の不確かさ、弱さ、勝手さ。物語の最後に主人公が徳田に心の中で投げつける言葉は、彼を取りまく社会すべてにあてられたものでもあると思います。
――「僕たちは、全くわかりあっていなかった」。
 ある意味、本当に人の嫌な部分に踏み込んだ作品。それでも、やけにみずみずしくて躍動感にあふれて明るいのは、その描き方があまりにも自然でしかも的を射ていて、「醜いもの」として否定して覆い隠してしまうには、我々の根源に根づいているからでしょう。
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スティーヴン・キング「スタンド・バイ・ミー」
 押しも押されもせぬ巨匠の、もはやあまりにも有名な自伝的中編、読んでみました。うーん、正直に言うとあんまり楽しめなかったかも。子どもたちの友情は切ないけれど、みずみずしくて良いけれど、展開としては地味ですからねえ。まあ、ホラーとして書かれたのではなくて、「普通の小説」として書かれたものなので、エンターティメントとしての楽しみ方をしようとしても、なかなか難しい、ということなのでしょう。実はそっちより、併録の「マンハッタンの奇譚クラブ」の方が妙に楽しめてしまった私でした。グロテスクだけれども心温まるというか。生命の神秘と言うか。
 うわ、なんかめちゃくちゃ短い感想になっちゃったぞ(笑)
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天沢退二郎「光車よ、まわれ!」

 一郎はある日、雨の日に教室に入ってきた同級生達の姿が不気味な変容を遂げていたのに気付く。 そのために彼らに襲われた一郎は、クラスメートの龍子をはじめとするグループに助けられる。彼女によると、この町は水を司る魔物どもの侵略を受けており、それを防ぐには、魔の姿を光のもとに暴き出す力を持つ「光車」が必要なのだという。一郎達は、三つの「光車」を見つけ、水面の裏側にある影の世界の住人達を倒すことができるのだろうか。
 児童文学ファンタジーの傑作と呼ばれる本書ですが――たしかに、面白いです。が、やっぱり大人になってから読むと、ストーリー状の穴がついつい見えてしまって、なんだかなあ、という感じです。「水の世界の侵略」とか、「光車」とか、胸のわくわくする設定ではあるんだけど、なんで「光車」なんてものがこの町にあるのか、「水」の住人達の侵略は言ってることの割になんでそんなにちゃちいのか(笑・・・って、このへんはある意味特撮戦隊ものにも似てるかな)、とか。それでも、全体に流れる妖異な雰囲気に魅せられて、一気に読んでしまえるんですが。いかんですね、読む人によっては、思春期の旅立ちを象徴的に描いた、素晴らしい物語、だと感じられるようなんですが、私のような細かい設定が気になる重箱隅つつき的なヲタク野郎が読むと、本筋でないところが妙に気になってしまうという(笑)。もっとこんな風に性格がひねくれる前に読むべき作品だったのでしょう、きっと。
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濱岡稔「さよならゲーム(A-side,B-side)」
 いつもお世話になっているはまっちさん作の「百科事典」ミステリ。ストーリーやその他の詳しいことについては、私が下手くそに説明するより、こちらを見ていただいた方が早くて楽しくて詳しいです、はい。
 と、いうことでここではストレートな感想オンリーでいきます。(ネタバレスレスレちょこっとあり)
 まず、結論から言うと、面白かったです、はい。はまっちさんが知り合いだから気を使ってるとかではなくて、そういうしがらみをとっぱらって見ても。ですが、読むにあたっては、正直不安でもありました。どうやら本格ミステリ読みの方からはあまり評判が芳しくないとか、あとは具体的なストーリー構成をはまっちさん本人の紹介で知ったりすると、どうも自分が苦手とする部類の小説らしい、という感じがしたので。実際、読みはじめてみると・・・正直に言うと、後半の解決部分に近くなるまでは、相当キツかったです(^^;)。はまっちさんの抱える膨大にして広範な知識。それには本当に脱帽なのですが、どうもその知識の紹介の仕方というか構成というか、おそろしく脈絡がなく、まるで読者の事を考えていないように(読んでいる時は)思えたからです。時々、知的好奇心をぐぐっと引きつけられる部分があるかと思えば、またちょっと目を離すととんでもない方向に話が飛んでいくので、正直苛々したことも数度。
 ですが、解決部分では――それらの不快感が反転して、謎ときのカタルシスに変わるのを感じました。そう、その苛々させられて、もう読むのやめようかどうしようか、と斎部のペダントリーの披露。それらもひっくるめて、作者が仕掛けたトリックだったとは。しかも、伏線の張り方も見事。トリック自体は、きちっとしているものの新味があるとは言い難いですが、それでも着地はびしっと決めてくださったので、何も文句はありません。
 ですが――鮮やかな解決部分が輝けば輝くほど、やっぱりなんて勿体無い・・・と思わずにいられませんでした。これだけの見事なトリックを仕掛ける力量がありながら、これだけの大長編を書き上げる筆力がありながら、どうして途中、あれほど読者を退屈にさせてしまうのか、と。はまっちさんの力量なら、本気になれば、最初から最後まで読者を腕ずくで引きずって、驚愕のラストを力一杯叩き付けることも可能だったはず。僭越ながら、何故はまっちさんがそれに失敗したのかを考察させていただくと、やはりそれは作者の作品に対する思い入れが、あまりにも強すぎて暴走してしまったからではないかと思うのです。斎部の繰り出す容赦ない知識のラッシュには、作者が愛する様々な文学作品・コミック、その他もろもろのものへの感情移入度が率直に表れていると思うのですが、10知ってても1しか書かないのが小説家です。そういう意味では、ここまで知識を無秩序に詰め込むこと自体が、小説として破綻していると言わざるを得ません。そしてまた、ラストの斎部と南津海の愛の告白。これも登場人 物への作者の思い入れがそのまま形になったもの、と私は解釈してますが、これもむしろ本編とのバランスを悪くしてしまい、浮いている印象を受けてしまった・・・のは私だけでしょうか?しかし、私が先述したような不安を乗り越えて、この本を手に取ろうと思ったのは、はまっちさんのサイトでの紹介文や掲示板の書き込みからにじみ出る、その「思い入れ」に強く惹かれたからでありまして・・・そしてまた、作品世界を形づくっているのも、各々の登場人物達の「思い入れ」であるとも感じますし。結局、この作品は良くも悪くも「思い入れに始まり思い入れに終わる」作品だったのだと思います。はっきり言って、万民受けとは言い難いのかも知れないですが、私は好きです、この作品。
 と、いうわけではまっちさん、あなたの真の力が発揮された第二作を、心から待望します!
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三雲岳斗「海底密室」
 深海4000メートルに設置された、海底実験施設「バブル」。取材に訪れた鷲見崎遊(すみざき・ゆとり)は、ここで二週間前、一人のスタッフが不審な死を遂げていたことを知る。既に自殺として処理されていたその事件だが、遊は不自然なものを感じ取る。その感覚を裏打ちするかのように、相次いで起こる怪死事件。暗く深い海の底、密閉されたこの空間で、一体何が起きているのか?遊は、携帯情報デバイスに宿った仮想人格と共に謎を追う。
 ハードなSFミステリの書き手として、既に地位を確固たるものにしつつある三雲さん。前から気になっていたのですが、思い切って読んでみました。いやあ、話としては、どっちかというと地味な感じもしますが(笑)、この本編中に詰め込まれた科学知識といったら・・・しかも、それらを総動員して語られる、「バブル」の壮絶なまでに緻密な設定。マジでマジで、こういう施設が今現在日本のどこかにあるんじゃないかという錯覚にとらわれるほどでした。それだけでもすごいのですが、「海底」「密閉された空間」というものが象徴するもの――人間の「孤独」。それらも、プロット、トリック、真相、全てに過不足なく織り込まれていて、まるで美しい一個の芸術品を見ているよう・・・というとあまりに陳腐な表現ですが、この緻密なプロットは、あの緻密な設定を完璧に作りこなせる神経の細やかさと理数系の素養あってこそのもの、という気がします。うん、大ざっぱで理数系が不得手な自分には、いろんな意味でうらやましいです(笑)
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倉知淳「壺中の天国」
 静かにて平凡な地方都市、稲岡市で起こる連続通り魔殺人。その犯行の都度にばら蒔かれる、常軌を逸した犯行声明文。年齢、性別、職業、趣味――全く互いに関わりを持たない被害者たちの間に、ミッシング・リンクは存在するのか?
 2000年の話題作でしたが、今ごろ読んでます(苦笑)。倉知さんって、本格ミステリの書き手として、ロジックの組み立て方にもトリックの創造にも長じていらっしゃるんですけど、何よりも自分が大好きなのは、猫丸先輩などに代表される、魅力的なキャラクター・メーカーとしての側面なのです。今回の探偵役(というより事件の進行を見届ける案内役?)である知子と、実歩の母娘。これがもう、微笑ましくって、可愛くって、いいのです。手口こそシンプルだけどやっぱり陰惨な通り魔事件の中で、とても対照的。そのテーマの割に物語が全体的に優しく、ほんわかしているのは、絶対にこの二人のおかげです。で、本筋の殺人事件の方も、被害者達の人間造形がしっかりと語られるので、一体どこにミッシング・リンクがあるのか、思わず真剣に探してしまいます。でもって明かされる、驚愕のミッシング・リンク――には、大笑いしてしまいました(笑)。でもって、思わずページをめくって再確認してしまいましたよ。一本とられたって感じです。それにしても、題名でもある「壺中の天国」。しっかり犯人の動機やバックグラウンドとも繋がっていて、それも印象的でした。
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伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」
 コンビニ強盗に手を染め、警察から逃走する途中で気を失った伊藤は、気付いたとき、江戸時代から鎖国を続けているという奇妙な島にいた。そこでは、物を考え、喋るカカシ「優午」が預言者として島民に敬われていた。しかし、その優午は翌日、死体となって発見される。未来を知ることのできる優午は、何故自分の死を阻止できなかったのか?
 なんというか、こういうミステリもあったのね、と目からウロコのお話でした。全体に流れる、ファンタジーな雰囲気。本格として、ものすごく驚愕の真相なのかと言われると、はっきり言ってそれほどでもないのだけれど(ごめんなさい)、全体に流れる雰囲気がとてもいいのです。それに、なんといっても優午です、優午。喋るカカシが出てくる本格ミステリなんて、一体誰が考えつきますか。あと、何故か悪人を自由に射殺できる資格をもつ桜も、結構かっこよくて好きでした。死にたくないために見苦しい言い訳をのたまう最低な相手を射殺するときの、「理由になってない」は、とてもお気に入りの台詞です。
 でも、正直を言うと、この話は読者として楽しんだというよりも、物書き・ミステリ書きの端くれとして、「ミステリって、こういうのもありなんだ」という、新たな可能性に気づかせてくれた、という部分での存在感の方が大きかったりするのです。創作意欲が掻き立てられます!(笑)
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恩田陸「六番目の小夜子」
 学園に伝わる奇妙な伝説「サヨコ」。その年の「サヨコ」になったものは、誰にも招待を知られず、いくつかの儀式を実行しなくてはならない。だが、ある日転校してきた、沙世子という名の少女。彼女の存在は、事態を思わぬ方向へ。
 恩田陸女史の伝説のデビュー作。ドラマ化もされて、そっちも観たのですがその感想は後日に回すとして。なんだか恩田作品特有の、不思議な吸引力を感じた作品でした。こう、最初からがっしり捕まえて離さないという感じではないけれども、じっくり読んでいるうちに徐々に徐々に物語の中に加え込まれていき、気がつくと読むのをやめられなくなっているという。それにしても、関口元判事がこの話にまで出てきているのには驚きました。恩田作品って、結構繋がっているんですね・・・(笑)
 それにしても、この物語のテーマは「学校」という場が持つ、不思議な生命のようなものの存在、ということなのではないかと思うのですが、その辺から綾辻行人氏の館シリーズを連想したのは、私だけでしょうか。私が読んだハードカバー版の解説も綾辻氏だったことだし(笑)
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東理夫「南青山探偵事務所」
 南青山で探偵業を営む、リョウスケ。彼が出会ういろいろな人間と、いろいろな事件。80年代の南青山を舞台に繰り広げられる、ちょっとおしゃれでちょっと切ない探偵ストーリー。
 その昔、ミステリマガジンで連載されていたのをちょこちょこ読んでいたこのシリーズ。古本屋で単行本を見つけたので買ってみました。うん、謎ときもハードボイルドさも、とてもライト。その軽さが、とてもいい感じのシリーズです。それにしても、この小説が連載されていた頃は、南青山の現在の風景をおしゃれに描写していることがウリだったと思うのだけれど、きっと今の風景ってのは全然違っているんだろうなあ。
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エラリイ・クイーン「九尾の猫」
 ニューヨークを恐怖のどん底にたたき込んだ、連続絞殺魔「猫」。それに挑む、名探偵エラリイ・クイーン。一見無関係な被害者同士を結ぶ線は何か。
 いわずと知れた「ミッシング・リンク」ものの名作、手に取ってみました。いや、素直に面白かったです。クイーンの諸作は、作品によって自分には向き不向きがあるので、これはどっちだろうかとどきどきしながら読みましたが、どうやら今回は相性ぴったりだったようです。ミッシング・リンク探しにもはらはらさせられますが、哀れな最後のどんでん返しも、本格の真骨頂というかんじで、重たいながらもエキサイティング。
 それにしても、物語中盤、市民集会の途中で誰かが「猫」の出現を叫び、それがきっかけで群衆がパニックに陥るシーン。とても迫力があって、一大スペクタクルなのだけど、こう言ってはなんですが、たかが連続絞殺魔ごときでここまで大混乱に陥るとは。壮絶な有り様の猟奇殺人なんかが日常茶飯事になっている現在のアメリカの状況から考えると、平和な時代だったんだなあ、と不届きながら考えてしまいます。
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栗本薫「グイン・サーガ76 魔の聖域」
 ついに伝説の魔道師アグリッパとまみえたヴァレリウスとイェライシャ。あまりにも魁偉な姿のアグリッパを説き伏せ、ヤンダル・ゾッグ打倒のためその力を借りることはできるのか。一方、ついに激突するナリス軍とレムス軍。パロの命運を巡る闘いはますます混迷を極める。
 うー、大分旬を過ぎているのですが(これを書いてる時点で、79巻が発売したところ)、ますます盛り上がるグインサーガです。とりあえずこの巻の見どころは、完全にヤンダルの化身と化したレムスの妖怪ぶり。もう、ノスフェラスをグインと旅した頃の彼には、戻れないのでしょうか?そう思うとなんだか悲しいです。うー、これだけ読み遅れてると、感想書いててもむなしいので、続きを読んでから気合入れて書きます。
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小栗虫太郎「失楽園殺人事件」
『黒死館殺人事件』を解決した、名探偵・法水麟太郎。彼が遭遇した数々の怪事件を集めた短編集。  すさまじく多方面の専門知識をこれでもか、というくらいに押しつけてくれるのが特徴の(笑)小栗氏、いや、読んでいてこれだけしんどい小説も珍しいです(笑)。いや、自分にとっては、ですけど。怒濤のごときペダンティズムの嵐と、法水氏の常軌を逸した推理に、ただただ圧倒され、翻弄されるばかり。こうなると、探偵と一緒に推理をして真相を当ててやろう、なんて気持ちはどこかへ吹き飛んで、時に妖異、時に酸鼻、時に高尚な膨大なる知識で構築された迷宮の中を、ただ彷徨うことしかできません。だがしかし、この読みづらさ、訳の分からなさが反対に、逃れたくても逃れられない魅惑的な悪夢のように、心をとらえてしまうのだから不思議です。同じくらいのページ数の他のミステリとは比べ物にならないくらいの時間を費やしてこの短編集を読了した後、長いこと中断していた「黒死館殺人事件」の攻略を再開してみようか、などという気分になるのだから不思議です。恐るべし小栗マジック!
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辻真先「デッド・ディティクティブ」
 新興宗教集団「ダイゴ」が所有する巨大クルーザー「醍醐丸」の船内で、教団の運営を司る虚空蔵多聞が首を切断されて殺され、次いでシンボル的存在である転法院レンゲも殺害された。そしてその後醍醐丸は沈没し、その際死亡した多聞の愛人・19歳の柳みすずは、死者の生前の罪業を裁く十の王が控える死出の旅にて、事件の犯人であるという濡れ衣を着せられる。各々の関所を、己の無罪を主張しつつくぐり抜けてゆくみすず。そしてついに、閻魔大王のもとまで辿り着くに至って、彼女は無罪であることを認められるも、今度は真の下手人が閻魔大王にすら分からぬという、前代未聞の事態に発展する。みすずは、閻魔に出動を要請された三人の探偵とともに、真相を突き止めるべく走る。
 死後の世界が舞台という、あまり前例がない(皆無じゃないけど)設定のミステリ。この奇想、ユーモア、さすがは大家辻先生、といったところ。死後の世界の描写や、魅力的な醍醐丸船内での怪事件など、それだけでもかなりおもしろいのだが、最後の最後の、カタストロフィ的どんでん返しが、またすごい。みすずと一緒に捜査を行うことになる三人の探偵、いずれも辻作品の登場人物で、単なる先生のお遊びかと思いきや、彼らの存在までが、最後の真相の伏線になっているのである!いやいや、ついついネタバレすれすれっぽくなってしまいましたが(^^;)。その他あちこちで、伏線の張り方があまりに見事なので、ついつい見ほれてしまいそうでした。老練にして奔放な創造力の持ち主であるな辻先生ならではの傑作、という感じです、はい。
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辻真先「アリスの国の殺人」
 児童文学をこよなく愛しているにも関わらず、漫画雑誌の編集者に抜擢されてしまった。綿畑。彼が夢見る世界では、アリスをはじめ様々な幻想世界の住人が共存している。その世界で起こる、テェシャ猫殺し事件。そして現実世界でも、彼の上司である漫画編集の鬼・明野が殺される。夢と現の世界で繰り広げられる、殺人事件の行方は一体?
 これも、辻さん一流の、奇抜な設定のお話。推理作家協会賞受賞作。アリスの世界に、鉄人20号やヒゲオヤジまで出てくる、なんとも奇妙キテレツな世界観。私的には嫌いではないですけど、きっとこういうのがお気に召さない人もいるんだろうなあ。トリックも、どっちかと言えば大がかりでリアリティを欠いている感じもするし。ですが、これまたトリックが動機や世界観と綺麗に結びついているので、このあたりは欠点にはならないでしょう。それにしても、漫画の編集の人というのは、みなさん明野さんみたいに迫力があるのでしょうか。だとしたら、漫画業界ってすごく怖い所のような・・・(笑)。でも、そこまで熱くなれるものがあるというのも、うらやましいことではありますが。
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大塚英志「物語の体操」
「多重人格探偵サイコ」をはじめ、人気コミックの原作者として、また小説家として快進撃を続ける大塚氏。その創作の秘密がうかがえる、物語を構築し、小説を書くための最短コースを記した本。悩めるアマチュア小説書きの端くれであるショーシャンクめは、この手の本を店頭で見るとつい手に取ってしまう癖があるのですが、今回はあの「〜サイコ」の原作者の著書、ということもあって、二重の引力が働いていて、つい購入してしまいました。が、この本で明かされる物語を構築するためのコツは、目からウロコでした。そんな簡単に「物語」が出来てしまっていいんかい、てなくらいに。でも、「物語」というものの本質となる部分は古来揺るぎなく変わりないのだろうから、それにちょっとしたヒネリを加えるだけで無限に物語のパターンが広がっていく、というのは、ある意味当然のことなのかも。その実例が、今までの大塚氏が原作を手がけたコミック自体であるだけに、非常に説得力があります。本当に勉強になる一冊でした。 
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長谷川裕一「もっとすごい科学で守ります!」
 以前、というかこのHPを立ち上げた直後くらいのこのコーナーで紹介した、「すごい科学で守ります!」の続編(?)。前回は初めて巨大ロボが登場するバトルフィーバーJからメガレンジャーまでに登場する戦隊のテクノロジーを一本の線で繋げて、シリーズを一つの大河ドラマとしてとらえることに成功していた。それだけでもすごいのに、今度は仮面ライダーや宇宙刑事シリーズ、果てはキカイダーやマシンマンまで!もう、ここまで来たら神業としか言いようがないです!・・・まあ、ここまで来ると、途中いささか苦しい説明があったりするのは否めないのですが、それでもきちっと理屈が通っているだけで凄い!
 ちなみに、後書きに長谷川氏が記してある、この本の執筆スタンスにも、私は心を打たれました。
『「そんなことは、できないよ」という前に、「どうすれば、そうできるだろう」と考えること・・・』
 そう、これはしばらく自分の座右の銘になりそうです。
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都筑道夫「キリオン・スレイの生活と推理」
 青山富雄の家に居候している自称詩人のキリオン・スレイ。定職にも就かずヒマを持て余している彼の好奇心は極めて旺盛。バー「グロテスク」で起こった衆人環境での射殺事件や、悪魔のいないはずの日本でなぜか行われる奇妙な黒ミサ、完璧なアリバイを否定してくれと頼み込む女など、様々な謎を明快な論理で解き明かす。全6編収録。
 以前から読んでみたかった「キリオン・スレイ」のシリーズ、なぜか長いこと古本屋でもお目にかかれず手に取る機会もなかったのだが、たまたま最近近所に出来た古本屋で見つけたので、速攻でゲットしました。いや、面白いです(断言)。なんというか、全編を通じて、ものすごく奇想天外な謎ではないのに、見せ方で奇想天外にしてしまう技量というか。そしてそれを驚天動地のトリックでもないけれども論理の煌きとストーリーテリングの妙で血湧き肉躍る解決に持っていく手腕というか。やはり巨匠は違う、と素直に感動しました。世の中、トリックは出つくしてしまったと言われるけれども、この短編集を読んでいると、そんなことはないと実感できます。世の中のいろいろな事象をちょっと角度を変えて見てみるだけで、新しい謎・新しい論理・新しいトリックというのは生まれてくるものなのです。この短編集に収録されている6編は、どれも好きです。が、ミステリ好きの嗜好を逆手に取って活字から目を離せなくさせる、「なぜ完璧のアリバイを容疑者は否定したのか」が、一番輝かしく感じます。
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太田忠司「ベネチアングラスの謎」
 ガラス工芸品の美術館を併設する大和田皮膚科病院で、院長の大和田彩子が薬殺された。現場には何故か、割れたベネチアングラスの一輪挿しが転がっていた。被害者の身辺は、つきまとう昔の恋人、婚約者との関係に悩む妹、医院に不満を抱く事務員など、動機のある人間に囲まれていた。SF作家にして名探偵の霞田志郎は、鋭い洞察力で意外な犯人を看破する。表題作他、霞田志郎シリーズの短編8編をおさめた短編集。
 太田さんの作品を読むのも、実は久しぶり。ちなみに太田さんはいろいろ好評のシリーズを抱えておられますが、自分が一番好きなのはやはり作家探偵霞田志郎のシリーズなのです。ばりばりの本格であるうえに、ストーリー性も抜群。そしてさらに、探偵役の霞田志郎の真摯さ・優しさ、それをとりまく妹千鶴や三条刑事といった脇を固めるサブキャラも実に魅力的なのです。
 今回の作品集を読んで改めて再確認したのは、やはり霞田志郎は人間の本質を見抜くことによって真相を見抜くタイプの探偵であるということ(無論、長編などでは巧緻なトリックを緻密な論理的で解き明かしたりもしているけれども、それにも増して)。ベネチアングラスの謎や死者のホームページが更新されていた謎など、一見トリッキーな話に見えるけれども、推理の土台を支えるのは人の悪意や悲哀を時には鋭く時には優しく見つめる志郎の洞察である。そういう意味で、やはり一番印象に残ったのは、巻末に収録された中編「ウィザウト・ユー」。名探偵であるが故の苦しみと悲しみが、ひしひしと伝わってくる佳作でした。
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高木彬光「邪教の神」
 古代大陸で信仰されていたという、呪われし邪教の神、チュールー。その像を手にした者の頭上には、無残な死が降りかかる。そして死した男が最期に遺した言葉は、「チュールー」。彼らの死は、やはりチュールーの神の呪いによるものなのか。この不可解な謎に、名探偵神津恭介が挑む。その他、神津恭介の若き日の切ない恋に関わる殺人「晩歌」を含む、計4編を収録した短編集。
 久々に手に取る高木作品であります。何故に突然この作品を読みたくなったかといえば、近年この表題作が、学研から文庫で出版されたクトゥルー神話短編集に収録されているのを見かけたからであります。「えっ、この方がクトゥルー?!」という意外性に惹かれて(笑)。ですが、実際は直接クトゥルーが出てくるわけではなく、神像の姿形もどうやらラヴクラフトの伝えるものとは違うようです。が、古代大陸で崇拝されていたとか、海底から蘇ろうとしているとか、極めてクトゥルーに近い設定であり、こりゃ高木氏がクトゥルー神話を意識していたとしても不思議はないな、と納得いたしました。物語そのものは、そんなにもトリックも新鮮味はないものではありますが、そこはそれ、邪教の呪いとからめて読み手をぐんぐん事件に引き込んでいく技量は、やはり巨匠ならでは。堪能しました。
 ですが個人的には、「晩歌」の方が切なくてそれでいて意外性があって、読みごたえがありました。どちらかといえば超人型であまり感情を表に出さない神津氏が、こんなにも苦しむ姿を見るのは実際初めてでありまして(って言うほど高木氏の作品に精通しているわけでもないのですが(^^;))、胸にじんとくるものがありました。後の二編(「これが法律だ」「私は殺される」もそれなりに面白かったのですが、なんとなく設定が似ていたので、ちょっと興が殺がれた部分があります・・・が、がっちりとした構成でこれもやはり巨匠の技かと感じいるものでありました。
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恩田陸「puzzle」
 巨大なコンクリートの廃墟で覆われた、無人の島。ここで時を同じくして命を落としたと思われる、三つの死体。学校の体育館の餓死死体、高層アパートの屋上に墜落した全身打撲死体、映画館の座席に腰かけていた感電死体。事故か殺人か、この不可解な事件の真相を確かめにやってきたのは、二人の検事、関根春と黒田志土。息詰まる彼らの推理の攻防の行方は?
 2001年度版「このミス」によると、今年最も旬な国産作家さんだった恩田陸さん。彼女の創造した人気一家(笑)関根ファミリーの長男、春が主役を張って推理を展開する、美味しいお話。
 巻頭に散りばめられた多くのキーワード――さまよえるオランダ人、失われた元号「光文」、地形図など、一見何の関連性もなさそうなこれらが、この短い物語の中でどう結びつくのかとどきどきしましたが、流石手練の恩田さん、きれいにぱしっと、それこそタイトルの「パズル」のようにはまる結末でした。顎が外れそうなほどの驚愕、というようなショッキングさやどんでん返しではないのだけれど、じゅわっと胸の中に消えないイメージが焼きつくような、なんとも不思議な感触でした。そう、自分が恩田さんの作品を読んで感じるのは、いつもこういう心地なのですよね。手に汗握るサスペンスも、はらはらするどんでん返しもいいけれど、こういう心情にじわりと染み入ってくるようなミステリもいいなあ、としみじみ思いました。
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柄刀一「アリア系銀河鉄道」
 お茶を味わうのが大好きな宇佐見護博士。彼がいつものように紅茶の香りを感じていると、ひょっこり現れた不思議な猫。『字義原理・実存の猫』と名乗る彼は、博士を我々の世界とは全く異なる法則によって成り立つ、不思議な異世界へと導く。そこは原語と字義が現実の現象を支配する世界だった。そこで起こった密室殺人の謎を解くために、『探偵役』として博士は招かれたのだった・・・こんなファンタスティックな幕開きの「言語と密室のコンポジション」をはじめ、宇佐見博士が異世界(「探偵の匣」だけは微妙に「異世界」とは違うような気もするが、我らの共有する空間とは異なる場所での推理、という点でこれもある意味「異世界」かな?)で極めてアクロバティックな推理を展開する短編集。
 2001年版の「このミス」でも極めて高い評価を得ていたこの作品、自分も発売当時になんとなくタイトルのセンスの良さや柄刀さんの作品を常々読んでみたいと思っていたこともあって、速攻で手に取ったのですが、実に後悔のない素晴らしい買い物だったと自負してます(って自分が偉いわけではないのだけれど(^^;))。かつて泡坂妻夫さんの「亜愛一郎」シリーズにお初にお目にかかったとき、意外性のある推理を構築するために事件の起こる世界の法則そのものから創造してしまう(ちょっと大げさかもですが、自分はそう解釈しているのです)というものすごい大技に、心から感動したことがあるのですが、今回のは更に大技。その「事件の起こる世界」そのものを、はるかな時空や現実世界を超えた空間にまで伸ばしてしまっているのだから。一歩間違えれば荒唐無稽なそれを、しっかりロジカルにファンタジックに、幻想小説の味わいもありながらしかもバリバリの本格として成立させているのだから、もう感激です。自分はミステリーも好きですがファンタジーの割と好きで、両方がミックスされたような作品はないかと日頃から思っていたので(今までもあるにはあったけど、あんまり 満足出来なかったのです・・・「殺竜事件」とか(苦笑))、今回の出会いはなんか運命的にも思われたりして(笑)。このシリーズ、まだまだ続いていきそうですが、このまま追っかけていきたいと思います。
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京極夏彦「巷説百物語」
 濃い闇の中をあやかしの者が群れ集う江戸時代。百物語になぞらえて、数々起こるあやかしの出来事。小豆洗い、白蔵主、舞首――不可解な怪異の影に、仕掛けの糸を操る小股潜りの又市、山猫廻しのおぎん、考物の百介、事触れの治平。人の心の暗闇を突く、裏の稼業の者どもは今日も走る――
 京極さんの小説を読むのは、実はめちゃくちゃお久しぶりです。実は先日、親戚からWOWOWの「京極夏彦『怪』」のビデオを貸してもらい、どっぷりはまりこんでしまい、これは原作も読まねばなるまい、と思ったからであります。いや、あのドラマを見たときの驚愕は忘れられません。ただの妖異譚かと思っていたら、仕事人だったんですもの(笑)。しかも、あの仕掛けの華麗さといったら・・・と、これではビデオの方の感想になってしまいますね(^^;)さて、原作の方は、さすがにあんまり仕事人してません(笑)コン・ゲーム・・・というと多分言葉の意味的に間違っているのでしょうが、妖怪妖魔が徘徊しそうな時代背景だからこそ出来る、あやかしのトリック・ゲーム。ですが、実際に妖怪は出てこなくとも、しっかりと裁かれる面々のパーソナリティは常軌を逸していて、やはり妖怪とは人の心が生み出すものなりと、苦々しく考えさせてくれます。いやしかし、京極氏のストーリーテリングの冴えを改めて再確認させていただきました。美味しい短編集。
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西澤保彦「なつこ、孤島に囚われ。」
 妄想壁の強い百合族作家・森奈津子。彼女はある日、作家仲間と一緒に居酒屋で呑んだ帰り、見知らぬ逞しい女性に拉致され、どことも知れぬ孤島に軟禁されてしまう。しかし、綺麗な別荘に美しい青い海、食べ放題の毛蟹、ついでに仕事もできるワープロまである快適な環境に、彼女は大喜び。ところが、隣に見える似た形の島にも別荘があり、そこからは男性が奈津子の様子を双眼鏡で窺っていた。そして一週間後、その島で死体が発見され、それは件の男性だった。実に奇妙な状況で発見されたその死体、奈津子はとんでもない推理を展開し、そして明かされる「とんでもない真相」とは・・・
 毎度御贔屓の西澤保彦さんの新刊、しかもお手ごろなな400円という値段の文庫で登場したので、速攻で探して買って読みました。いや、おどろき。西澤さんって、お会いした印象も今までの作品の印象も実に真面目な方だと思っていたのですが、こんな話も書けたとは(笑)。しかも、実に生き生きした筆致でいらっしゃる。もうとにかく、抱腹絶倒という感じで楽しませていただきました。このように、話の本筋もとても面白いのですが、更に興味深いのは、主人公の森奈津子さんをはじめ、登場人物の多くが実在の作家さんであるということ。倉阪鬼一郎さんも、野間美由紀さんも、大好きな作家さんですので、もう思わずにやにやしてしまいましたよ。この辺の味わいは、竹本健治さんの「ウロボロス」シリーズに似たものがありますね。ちなみに森奈津子さんが主役のお話は、現在(2000年12月現在)小説推理で連載中の、「両性具有迷宮」と続いていくのですが、こっちも毎回毎回笑わせていただいてます。このまま、どんどんシリーズ化していって欲しいです、マジで。
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 あんまり、「甘口」になってないかも?(^_^;)                                  戻る