「裏窓」(”Rear Window” 1954年)


・ストーリー
 ニューヨークのアパートで暮らす報道カメラマンのジェフは、事故で足を骨折し、当面の間車椅子生活を強いられる。そんな彼が見つけた退屈しのぎは、裏窓から中庭をはさんで建っている、アパートの別棟に暮らす住人達の生活を望遠カメラで観察することだった。裏窓から見える様々な人間模様。そんなある日、彼は病気の妻を持つ大男が、大きなトランクを抱えて深夜に出かけるところを目撃する。その後も何度か何故かトランクを持って出かける大男。ジェフは、男が最初にトランクを持ち出して以来妻の姿が見えないのに気付く。そしてその他の様々な不審な行動から、ジェフは男が妻を殺害し、死体をどこかに運び出したのではないかと推測。恋人のリザや友人のドイル刑事に協力を頼み、なんとか男――宝石商のソーウォルドの犯行の証拠を掴もうとする。リザの大胆な行動により、大きな手がかりを得るジェフだったが、覗いているところを偶然ソーウォルドに発見されてしまった。動けないジェフの身に、ソーウォルドの魔手が迫る――

・紹介&感想
 ハラハラドキドキなサスペンス映画、ホラー映画、或はアドベンチャー映画を観ていて、ピンチに陥っている登場人物をなんとかしたくて、思わず体が動きそうになったことはないだろうか。この映画におけるジェフは、そのまんまそういう観客のもどかしさというかフラストレーションというかの体現者である。  動けない、何が目の前で起こっていてもどうすることもできない、という感覚が、ますますジェフと観客を同化させ、伝染してくる彼自身の焦燥に駆り立てられた観客は、ますますスクリーンにくぎ付けになってゆく。それを最も実感できるのが、ソーウォルドの部屋に忍び込むリザをジェフが裏窓から見守るシーン。ソーウォルドが近付いてくるのがはっきり分かるのに、それをどうすることもできないばかりか、彼女に教えることすら出来ない!サスペンスの巨匠、ウールリッチが原作なだけあって、裏窓から見える光景から犯罪を見つけてしまうという異常な設定も際立っているが、主人公が行う「のぞき」を、カメラワークによってより際どく、いかにも覗いているらしく、観客さえ共犯者であるかのような意識に陥れてしまう手法などはヒッチコックならではで、良い素材に良い料 理人が巡り会ったことの好例と言えるだろう。
 ・データ
 製作・監督 アルフレッド・ヒッチコック
 原作 コーネル・ウールリッチ(ウィリアム・アイリッシュ)
 脚本 ジョン・マイケル・ヘイズ
 撮影 ロバート・バークス
 音楽 フランツ・ワックスマン
 出演 ジェームズ・スチュアート(L・Bジェフリーズ「ジェフ」)/グレース・ケリー(リザ・フレモント)/ウェンデル・コーリー(トーマス・J・ドイル刑事)/セルマ・リッター(看護婦ステラ)/レイモンド・バー(ラース・ソーウォルド)/ジュディス・イヴリン(ミス・ロンリーハート)/ロス・バグダサリアン(作曲家)/ジョージーヌ・ダーシー(ミス・トルソ)/ジェスリン・ファクス(女彫刻家)/アイリーン・ウィンストン(ソーウォルド夫人)

     


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