「どんどん橋、落ちた」(綾辻行人)
・作品紹介
1991年の大晦日、推理小説家の「僕」――綾辻行人氏の仕事場を訪れた色白の青年U君。彼が持ってきたのは、自分で書いたという奇妙な犯人当て推理小説だった。「どんどん橋」を渡った向こうの崖下で、悪戯好きの少年ユキトを殺したのは誰か?現場へと通じる道を一望できる場所にずっといたという、愛犬タケマルを連れた悩める青年リンタローは、その道を通った人間は一人もいないと証言する。
この、奇妙に巧妙にねじくれた犯人当てパズルの答えを、綾辻先生は見つけることが出来るのか?
そして、誰もがあんぐり大口をあけてしまいそうになること請け合いの、驚愕の真相とは・・・
「十角館の殺人」でデビューし新本格ムーブメントの端緒となった綾辻氏は、館シリーズに代表されるスタンダードな本格長編の他、この「どんどん橋、落ちた」のように犯人あて中短編でも鮮やかな手腕を見せる。長編では緻密なロジックを得意とする綾辻氏だが、この一連のシリーズでは、読者の足元を容赦なくひっかける大爆笑の論理の罠をしかけてくる。この解答に納得がいくかどうかは、大きく別れそうだが、どっちにしろインパクトという点ではそのあたりの本格パズラーは足元にも及ばないといえるかもしれない。ちなみに、綾辻氏の若き日を象徴する幻影?であると推測されるU君は、この続編?である「ぼうぼう森、燃えた」にも登場する。
「フリークス」と同じく、作中作の犯人を机上で推理する、という形式であることから、安楽椅子ものとして位置づけられると思い、今回ここに紹介する。ちなみに、99年に発売された同タイトルの短編集には、同じように読者の口を開けっぱなしにしてしまいそうな作品ばかりが収録されている。
・作者について
綾辻行人(あやつじ・ゆきと)・・・プロフィールについては「フリークス」の解説を、ご覧下さい。
・収録作品
99年に講談社から発売された単行本に収録されているのは以下の5編。
・「どんどん橋、落ちた」
・「ぼうぼう森、燃えた」
・「フェラーリは見ていた」
・「伊園家の崩壊」
・「意外な犯人」
ちなみに「どんどん橋、落ちた」は立風書房の「奇想の復活」に収録されたのが初出。