「ユニオン・クラブ綺談」(アイザック・アシモフ)


・作品紹介
 ユニオンクラブの談話室に集まる四人の常連客、私とパラノフとジェニングズ、そしていつもスコッチのハイボールを片手に船を漕いでいるご老体グリズウォルド。この四人が集まれば、必ず四方山話に花が咲く。話の盛り上がりが最高潮に達すると、それまで居眠りしていたと思われたグリズウォルドがやおら目を覚まし、かつて自分がスパイをしていたときの奇想天外なエピソード、自分が優れた洞察力で難解な謎を解いたという自慢話を始める。聞いている三人は、謎の解答は皆目見当つかず。丁度答えにさしかかるそのときに、再び眠りに落ちそうになるご老体、ここで読者も、考えましょう――果たして事の真相は?
 安楽椅子探偵の名作のひとつ、「黒後家蜘蛛の会」の著者でもあるアシモフの、もう一つの安楽椅子探偵シリーズ。短編という形式といい、とかく内容的に重複しかねない両者であるが、丁寧で慎重で紳士的な「黒後家蜘蛛〜」のヘンリーに対して、グリズウォルドは傲岸不遜な海千山千の老人として描かれている。また、同じ短編としても「ユニオン・クラブ〜」の方がかなり長さが短く、ほとんどショートショートに近い。分量的に短いからといって手間暇がかからないかといえば無論そうではなく、「黒後家蜘蛛〜」と執筆時期がヒットしているために、アイデアを捻り出すのにアシモフはかなり苦労したという。 

・作者について
 
アイザック・アシモフ(Isaac Asimov)・・・1920年生まれ、1992年没。SF黄金時代の立役者の一人であり、特に「ファウンデーション」シリーズや連作短編集「わたしはロボット」「鋼鉄都市」などのロボットテーマものなどで高い評価を受ける。彼が作った「ロボット三原則」はあまりにも有名。SF小説の中に推理小説的要素を盛り込む(「鋼鉄都市」など)などの功績も大きいが、その後「象牙の塔の殺人」など純粋なミステリの執筆も手がけるようになり、安楽椅子ものの名作として長く語り継がれることとなる「黒後家蜘蛛の会」シリーズや「ユニオン・クラブ綺談」を発表。また、科学解説者としても著名であり、その博覧強記ぶりは作品にもフルに活かされている。

・収録作品
 この短編集は創元推理文庫で1989年に発刊されているが、現在も順調に版を重ね、現役で手に入れることができる。収録作品は以下の通り。括弧内は原題。
・逃げ場なし(No Refuge Could Save)
・電話番号(The Telephone Number)
・物言わぬ男たち(The Men who Wouldn't Talk)
・狙撃(A Clear Shot)
・艶福家(Irresistible to Women)
・架空の人物(He wasn't There)
・一筋の糸(The Thin Line)
・殺しのメロディー(Mystery Tune)
・宝さがし(Hide and Seek)
・ギフト(Gift)
・高温 低温(Hot or Cold)
・十三ページ(The Thirteenth page)
・1から999まで(1 to 999)
・十二歳(Twelve years Old)
・知能テスト(Testing,Testing!)
・アプルビーの漫談(The Appleby Story)
・ドルとセント(Dollars and cents)
・友好国 同盟国(Friends and Allies)
・どっちがどっち?(Which Is Which)
・十二宮(The Sign)
・キツネ狩り(Catching the Fox)
・組み合わせ錠(Getting the Combination)
・図書館の本(The Library Book)
・三つのゴブレット(The Three Goblets)
・どう書きますか?(Spell It)
・二人の女(Two Women)
・信号発信(Sending A Signal)
・音痴だけれど(The Favorite Piece)
・半分幽霊(Half A Ghost)
・ダラスのアリス(There Was A Young Lady)

 全30編。この文庫に収録されているものの他、邦訳されているものだけでも「EQ」に収録されたものなどがいくつかあるはずなのだが、詳しいことはわかりません(^^;)どんな形でもいいから、また読めるようにしてほしいです〜〜〜。


トップページに戻る