「ななつのこ」(加納朋子)


・作品紹介
 十九歳の短大生・入江駒子は、「ななつのこ」という本を表紙に惹かれて衝動買いする。<はやて>という名の少年が出会う不思議な事件と、彼を優しく見守りながらその解決を語る<あやめさん>との交流を描いたこの短編集を読了して、すっかり惚れ込んでしまった駒子は、生まれて初めて、作者である佐伯綾乃にファンレターを出す。その中には、先ごろ町内を騒がせた<スイカジュース事件>の顛末を記して。すると意外にも、佐伯綾乃本人から返事が届き、そこには事件の真相を見事に浮かび上がらせる推理が――こうして始まった、二人の文通。駒子が出会う身近な謎に、鮮やかな解答を示す佐伯綾乃。やり取りは次第に回を重ね、やがて二人に間に現れる不思議なつながり――
「ガラスの麒麟」で日本推理作家協会賞を受賞した加納朋子の、第三回鮎川賞受賞のデビュー作。
 日常どこにでも転がっていそうな身近な謎と、ハートウォーミングな解決、ストーリー展開に定評がある加納氏のデビュー作だけに、その魅力が集約されているともいえる作品群である。「ななつのこ」と絡めた七つの事件も、魅力的な謎と鮮やかな解決だけでも見事なのだが、それぞれの短編の中で語られる「ななつのこ」中の<はやて>と<あやめさん>のエピソード、こちらもちゃんと独立した安楽椅子探偵ものといえそうな本格短編になっており、それも含めるとこの一冊の中には、都合14の短編が収録されているという見方もでき、なおかつそれらが繋がって最終エピソード「ななつのこ」で佐伯綾乃の意外な正体が明かされるところなど、本当に芸達者としか言いようがない。 

・作者について
 加納朋子(かのう・ともこ)・・・1966年、北九州市生まれ。文教大学女子短期大学部文芸科卒。OLを経て、92年「ななつのこ」で第三回鮎川哲也賞を受賞。95年には「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞を受賞する。上記以外の著書には「魔法飛行」「月曜日の水玉模様」などがある。

・収録作品
 このページ製作に用いたテキストは、創元推理文庫「ななつのこ」1999年8月初版。ちょっとだけ作品紹介のところでも触れているが、収録作品は7本(当然か?(^^;))。
「スイカジュースの涙」 
「モヤイの鼠」
「一枚の写真」
「バス・ストップで」
「一万二千年後のヴェガ」
「白いタンポポ」
「ななつのこ」
 である。 


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