極道兵器
(2001.09.13 ふりーく北波さんのアドバイスにより一部加筆)
人間は、生まれながらにして様々な衝動や欲望を持つ。その中にはひとたび開放してしまえば自他共の社会生活を破壊してしまいかねない、危険なものもある。その主要な一つ、破壊衝動――それを徹底的に漫画の中で爆発させ、読む方にまで狂おしいほどのカタルシスを与えてしまう作品、それが今回紹介する、『極道兵器』なのである。
関東有数の力を持つ極道、岩鬼組。その組長の御曹司であるはずの岩鬼将造は、あまりに過激で狂暴な性質であるために日本を追い出され、南米で傭兵として破壊と殺戮の限りを尽くしていた。が、組長がアメリカ軍さえ動かす程の超巨大な権力を誇る「デス・ドロップ・マフィア」の襲撃により殺害されたという知らせを受け、大量の武器弾薬と共に帰還する。そして、人殺しと破壊に何の躊躇もない『極道兵器』将造と、デス・ドロップ・マフィアの闘いが開始され、将造は全身がぼろくずのようになりながらも、デス・ドロップと手を組んで岩鬼組を乗っ取った倉脇重介と、デス・ドロップの尖兵として派遣されていたサイボーグ・マフィアに勝利する。しかし、その際に受けた傷は予想以上にひどく、もはや立ち上がる事さえ出来なかった。そこに現れて、デス・ドロップの戦闘ヘリを撃墜し、将造を収容した一人の男――内閣特務捜査官・赤尾虎彦、通称レッド・タイガー。彼は役に立たなくなった彼の手足の代わりにマシンガン、ミサイルなどのヘビーな兵器を埋め込み、彼を文字通りのリーサル・ウェポンとして甦らせたのだった!日ごとに闘いは激しさを増し、核ミサイル、人間を獣と化す超
絶ドラッグ、潜水艦、果ては大口径レーザーを搭載した人工衛星まで登場し、常軌を逸した境地へと展開していく。ルールもモラルもないこの死闘に、最後に勝利するのは誰か?
石川賢作品の最大の魅力は、人としての常識なぞドブに捨てちまえといわんばかりの、トリップしそうになるほどの「勢い」にあるというのは衆目の一致する所であろうが、それをとことん純粋な形に研ぎ澄まし、読者の眼前につきつけてくれるのが、この『極道兵器』だ。主人公・岩鬼将造には、持って回ったような正義感や半端な理性や知性はカケラも持ちあわせない。とにかく、『暴れたい』という衝動のままに闘い、走り、また闘う。それでいて悪人かと言えば案外そうでもなく、過去の命の恩人を助けようとしたり、ろくでもない叔父に頼られて断り切れなかったり、妙に義理堅かったり情にもろかったり、それに何より、侠気がある。そう、この性格設定は、まさに闘争と仁侠に生きる『極道』そのものなのである。
石川賢がヤクザ映画(もしくは漫画)に傾倒しているのかどうかはわからない(ヤクザ組織についてのディティールがあまり細かくないことを考えると、石川氏本人はそっち方面にあまり詳しくないと考える方が自然ではある)が、将造のこのぶっちぎれたキャラクターを存分に活かし、なおかつ自然に溶け込ませるために、『極道』の世界はまさにぴったりだと言えるだろう。この世界観にこの主人公であるから、物語全体の疾走感はただごとではない。ジェットコースターのごとく、どんどんページを繰ってしまいたくなること請け合いだ。
で、あるから、日々神経をすり減らし、欲求不満と破壊衝動を不健康に蓄積させている現代人にとって、この作品がストレス解消に最高であるとここで断言しよう。こまかい理屈なんてどうでもいいから、将造が導くどでかいスケールの破壊の陶酔狂に、一緒にシンクロしてトリップしようぜ!(でも将造の真似をするのはやめようね(^^;)単なるテロリストになるから(笑))
さて。先日、当サイトの掲示板「ゲッター線談話室大決戦!」において、ゲッター・石川関係については大先輩のふりーく北波さんから、「石川賢氏のヤクザ映画への傾倒」ということについて、貴重な情報をいただきました。
上記の紹介文において、ショーシャンクめは『石川賢がヤクザ映画(もしくは漫画)に傾倒しているのかどうかはわからない(ヤクザ組織についてのディティールがあまり細かくないことを考えると、石川氏本人はそっち方面にあまり詳しくないと考える方が自然ではある)。』と書きました。が、ふりーくキャップによれば、石川賢氏は深作監督の『仁義なき戦い』シリーズをはじめとするヤクザ映画は凄くお好きらしいです。
その証拠として最初に挙げられるのは、岩鬼将造のスタイルそのもの。あれはシリーズ第2作の『仁義なき戦い 広島死闘篇』の主人公・山中正治(千葉真一)がモデルなのだそうです。また、「しょうぞう」という名前も、シリーズを通しての主人公
・広能昌三(菅原文太)から取られている模様。
ちなみに、ヤクザ組織のディティールが詳細に描かれちない理由としては、この作品が他のヤクザ漫画と違い、賢氏が描かんとするテーマが「ヤクザ映画の文体で仮面ライダーをやる」
というところにあるからであろう――というのが北波氏の推察。うーん、慧眼。
ちなみに、『仁義なき戦い』には、他にも『極道兵器』を読む上で、あちらこちらにネタのモトと思われる個所が散見しているとのこと。
その知識がスーパーロボットだけでなく、あらゆるジャンルに及び、また個々の作品について鋭い批評眼と海より深い愛をお持ちの北波さんならではの、貴重なアドバイス。本当にありがとうございました!>ふりーく大先輩
北波氏にもオススメいただいたことだし、ショーシャンクも一度『仁義なき戦い』を見てみなくては、と思います!
相変わらず、あんまりガイドになってないねえ(^^;)
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