「奇想天外殺人事件」(横田順彌)


・作品紹介
 天下の東西二大ヒーロー、イギリス情報局のジェームズ・ボンドと、旗本退屈男・早乙女主水之介の血を引く私立探偵、早乙女ボンド之介。彼の探偵事務所には、警視庁捜査一課の真暮警部が、毎度難事件・珍事件を持ってくる。それらの奇想天外な真相を、奇想天外な推理で見事解決する、ボンド之介の11の事件簿。
 ハチャハチャSFの大家、横田順彌氏が挑んだ安楽椅子探偵の事件簿は、予想に違わずハチャハチャな、抱腹絶倒の事件ばかり。探偵の生い立ちからして滅茶苦茶で可笑しいのに、いったい本当にこれで警官なのかと疑いたくなる真暮警部の言動、魅力あふれる不可能犯罪の難事件、そして駄洒落やユーモアと少々のSFテイストがほどよくシェイクされた、大笑いの解決。
 果たしてこれをミステリと呼べるかどうか、と訊ねられると少し苦しい気もするし、実際発表当時にはミステリファンからミステリとして扱ってもらえなかったりした経緯もあるようだが、頓智のきいた推理はそれなりに立派な謎ときとして成立しているし(「本格」ではないと思うけど(^^;))、形式としては安楽椅子探偵には変わりないので、ちょっとした変わり種として取り上げてみました。

・作者について
 
横田順彌(よこた・じゅんや)・・・1945(昭和20)年、佐賀県生まれ。1971(昭和46年)デビュー(何という作品でデビューしたかは、なぜか資料が見つからない(^^;))。1974(昭和49)年、「宇宙ゴミ大戦争」をSFマガジンに掲載、以後「謎の宇宙人UFO」(1978年)、「脱線!たいむましん奇譚」(同年)などを発表し、ハチャハチャSFという独特の作風を確立した。また、埋もれた古典SFの研究者でもあり、特に明治古典SFに造詣が深い。その知識を活かし、押川春浪を中心人物に据えた、1988(昭和63)年の「火星人類の逆襲」にはじまる明治時代を舞台にしたSFのシリーズもある。

・収録作品
 今回のテキストに用いたのは、1987(昭和62)年発行の講談社文庫版。その前に1984(昭和59)年に講談社ノベルズから発売されていた。もともと小説現代で掲載されていた10篇を一冊にまとめたものだが、講談社文庫版はこれに「イン・ポケット」に掲載された特別編(?)「『講談社文庫』殺人事件」を加えた完全版(?)となっている。が、

 収録作品及び初出は以下の通り。
・「高利貸し殺人事件」(小説現代 昭和56年9月号)
・「極秘研究殺人事件」(小説現代 昭和57年7月号)
・「ホモ・セクシュアル殺人事件」(小説現代 昭和57年9月号)
・「銀行強盗殺人事件」(小説現代 昭和57年11月号)
・「若手真打ち殺人事件」(小説現代 昭和58年7月号)
・「正一位稲荷殺人事件」(小説現代 昭和58年10月号)
・「ねじまわし殺人事件」(別冊小説現代 昭和58年冬号)
・「みにくい日本人殺人事件」(別冊小説現代 昭和59年早春号)
・「人毛かつら殺人事件」(別冊小説現代 昭和59年初夏号)
・「穴だらけ殺人事件」(小説現代 昭和59年12月号) 
・「『講談社文庫』殺人事件」(イン・ポケット 昭和60年7月号)

 ちなみに、ノベルズ・文庫双方、現在は絶版の模様(多分)。読みたい人は古本屋巡りを要する。


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