「鳥」(”The Birds” 1963年)


・ストーリー
 サンフランシスコの大手新聞社の社長令嬢であるメラニ−は、店でわざと彼女を店員と間違え、インコを注文した男・生意気な若い弁護士ミッチに出会う。彼に興味を覚えた彼女は、なんとか彼の身元を調べ、彼が妹の誕生日に贈ろうとしていたボタンインコのつがいを車に乗せて、彼の家があるボデガ湾沿いの小さな町に向かう。こっそり彼の家にインコを置いた彼女に一羽のカモメが襲いかかったのをきっかけに、町の様々な場所に鳥の大群が押し寄せる。鳥の襲撃は次第に激しさを増し、パニックに陥った町のあちこちで、それが原因で火災が起こったり、死者も出始めて被害は拡大していく。

・紹介&感想
 とにかく、お話も構成もシンプル。鳥が意味不明にとにかく人間に襲いかかり、襲いかかり、襲いかかっていく(笑)様をひたすら描写していく映画。メラニーとミッチのロマンスなんてのも出てくるけども、完全におまけ扱い(笑)。飽くまでこの映画の主役は鳥、鳥なのであります。凄じい鳥の大群が襲いかかるという結構嫌なシチュエイションに対して、映画の中では何の説明もなされず、原因不明なだけに逃げる以外の対策らしい対策も出てこない。ただ人は逃げ惑うのみ。そしてラストでも、問題は何も解決されないまま、メラニーたちが町を出ていくところで終わっているだけ。情報の欠如ということが、人の恐怖心をいかに煽るか、を実感させられる。こういう基本的ストーリーラインはもちろん、映像としてみても、振り向く度に増えていく公園の鳥や、ラストシーンの地面をびっしりと埋め尽くす鳥の大群など、恐怖の名場面多し。まあ、CG全盛の現在から見ますと、いささか合成や鳥の模型がちゃちい感じは否めない感じではあるけれど、そこは巧みな演出と画面構成で、決して現在から」見ても見劣りしないインパクト。
 また、この映画にはBGMが一切使用されず、その代わりとなるのが全て鳥の羽音というのも、凄い。この映画を見た後だと、我が町で大量発生しているヒヨドリが夕暮れどきを群れて飛んでいるのを見ると怖くなります(笑)。
 ちなみに、この作品の脚本を手がけたのは「87分署」シリーズなどで有名なエド・マクベインである。
 この、変なコメディから徐々に現実が狂い始め、恐怖が増大していく流れは、基本的に彼にアイデアであるらしい。小説家として一流の彼、この映画が傑作になるにあたっての功績は大きかったといえる。
 ・データ
 製作・監督 アルフレッド・ヒッチコック
 原作 ダフネ・デュ・モーリア
 脚本 エヴァン・ハンター(別名・エド・マクベイン)
 撮影 ロバート・バークス
 音楽 バーナード・ハーマン
 出演 ロッド・テイラー(ミッチ・ブレナー)/ティッピ・ヘドレン(メラニー・ダニエルズ)/ジェシカ・タンディ(リディア・ブレナー)/スザンヌ・プレシェット(アニー・ヘイワース)/ヴェロニカ・カートライト(キャシー・ブレナー)

     


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