「人形はこたつで推理する」(我孫子武丸)


・作品紹介
 めぐみ幼稚園の新米保母・妹尾睦月、通称「おむつ」。彼女はある日幼稚園に訪れた腹話術師、朝永嘉夫に恋心を抱く。そして、彼の腹話術の腕前に舌を巻くが、偶然、彼と彼が愛用している人形「鞠小路鞠夫」の間にある、不可思議な秘密を知ってしまう。鞠夫はただの人形ではなく、自分の人格を持った、頭脳明晰な名探偵だったのだ。彼は幼稚園で起こった兎殺害事件を、見事な推理で解決する――。
 我孫子武丸の人気シリーズの第1作目。連作短編集となっており、いずれも鞠夫の安楽椅子探偵的推理によって事件が解決する。「人形が主人公」という前代未聞の設定と、やんちゃ坊主のような鞠夫
、優しい朝永、ひたむきな睦月の3人が織りなす楽しくテンポのいい展開が、人気の理由だろうか。ちなみに、鞠夫が本当に「意志を持った人形」であるのか、朝永の二重人格によるものなのかは、幾分ぼかされている。

・作者について
 
我孫子武丸(あびこ・たけまる)・・・1962年10月7日、兵庫県西宮市生まれ。1989年3月、「8の殺人」でデビュー。ユーモア風味の効いた本格推理の他、ホラーや近未来アクションなども執筆する。また、コンピューターやゲームへの造詣も深く、1994年にはスーパーファミコン用ソフト「かまいたちの夜」(チュンソフト)の製作も手がける。

・収録作品
「人形はこたつで推理する」が最初に書店に並んだのは、1990年。角川ノベルズより刊行。その後講談社で文庫化され、現在手に入りやすいのはこちらの方(角川ノベルズ、今はないし(^^;))。このシリーズの続編として、「人形は遠足で推理する」「人形は眠らない」がある。いずれも、角川ノベルズから講談社文庫にオチる。その後長らくシリーズ中断していたが、最近講談社の「小説現代メフィスト」で、再開した。 
「人形はこたつで推理する」に収録されているのは、
「人形はこたつで推理する」
「人形はテントで推理する」
「人形は劇場で推理する」
「人形をなくした腹話術師」
の4編。
 第4話の「人形をなくした腹話術師」は、なんと鞠夫が誘拐されてしまうという、ハラハラする話である。 


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